著者
押尾 恵吾
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.225-238, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
34
被引用文献数
8 9

本研究は, 学習方略の使用や有効性の認知は教科によって異なるのかという学習者の実態を明らかにすることを目的として, 方略使用および有効性の認知の教科間比較を行った。また, 方略使用と有効性の認知の関連, 方略使用と有効性の認知それぞれの教科間の関連についても検討した。予備調査では, 複数の特定教科において実質的に高校生が使用可能であると考えられる学習方略尺度を作成した。本調査では, 高校生を対象に, 数学, 国語, 社会における方略使用の頻度, 有効性の認知, 達成目標, 教科の好み・得意感を尋ねる質問紙調査を実施し, 257名からの有効回答を得た。分散分析を実施した結果, 数学の体制化方略・精緻化方略, 国語の教訓帰納方略は, 有効性の認知が高いものの方略使用が少ない学習方略であった。パス解析を実施した結果, 教科や学習方略の種類によらず, 有効性の認知は方略使用の規定要因であること, 数学と国語は教科間の関連が弱いことが示された。以上から, 有効でありながら教科の学習の性質のために使用されていない学習方略の存在が明らかになり, 教科ごとに学習者に対して使用の促進をする価値のある可能性がある学習方略の存在が示唆された。