著者
押栗 泰代 河田 志帆 金城 八津子 畑下 博世
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.16-24, 2012-08-31 (Released:2017-04-20)
被引用文献数
1

目的:日本国内で現在開業する保健師の起業動機・起業準備・現在の活動を明らかにする.方法:WEB上で把握された開業保健師のうち同意のとれた9人を対象として,開業に至った動機や開業までの準備,現在の活動等について半構成的面接を実施し,起業動機・起業準備・現在の活動に焦点を当てて質的記述的に分析した.結果:起業に関連する19の中カテゴリー,8の大カテゴリーが抽出された.起業の動機は,【利用者に応じたサービスの提供ができない組織の現状】【自分の力が生かせる働き方】【保健師としての自分の使命】があり,開業までの準備は【経営のかじ取りを行う力の習得】【自分らしいサービス提供のための事業プランの策定】があった.開業後の現在は【継続的な新しい開業保健サービスの創発と拡大】【開業保健師のサービスから波及する健康増進】が明らかとなった.また,すべてに関連するものとして,【私を支えてくれる存在】が明らかとなった.結論:開業保健師の起業動機には,組織で働くジレンマがあり,保健師としての使命感がこれを後押しした.起業準備としては,経営能力を培うための自己研鑚に励みこれを開業後も継続している.開業後は,人々の声を直接拾い上げ,迅速かつ柔軟にサービスを提供している.これらから,開業保健師のサービスは,公共性の高い活動を行う組織の保健師と双方が補完することで,多様化する健康ニーズの対応への保健師の活動モデルとしての可能性が示唆された.