- 著者
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遠藤 勝義
井上 晴行
押鐘 寧
片岡 俊彦
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
本研究の目的は、絶縁体表面の原子構造と電子状態を原子レベルの空間分解能で観察できる高周波パルスSTM/STS装置を開発するとともに、超精密加工された絶縁体材料表面を計測評価し、加工条件の最適化を図ることである。絶縁体表面をSTM観察するためには、帯電と原子の移動を防ぐ必要性から、交流で伝導体に電子を注入するのに充分なバイアス電圧をmsec以下の短パルスで印加するとともに、探針-試料間の浮遊容量の影響を避けてトンネル電流の信号によってのみフィードバック制御する検出回路を開発しなければならない。さらに、絶縁体表面の欠陥準位を求めるために、トンネル電流のバイアス電圧依存性いわゆるトンネル分光を可能にしなければならない。そこで、矩形パルス電圧を印加した場合に浮遊容量によって生じる電流に妨げられることなくトンネル電流成分のみを検出できるRC回路を考案した。10kHz以上、±10Vまでの高周波矩形波パルスバイアス電圧を印加して、トンネル電流検出回路の出力をダイオードにより整流した信号をフィードバック制御する独自の高周波パルスSTM装置を設計・製作した。そして、導電性のあるHOPGの原子像を本パルスSTM装置によって観察することに成功した。しかし、真性半導体Siや酸化膜付きSi表面の原子像を観察するまでには至っていない。これらの原子像を観察するためには、100kHz以上の高周波領域における電流アンプのS/Nを改善するとともに、フィードバック制御系の追従周波数の向上が不可欠である。そこで、目的の高周波領域まで動作する電流アンプと印加する矩形パルス周波数のみを増幅するロックインアンプからなるトンネル電流検出系を提案し、新たな高周波パルスのトンネル電流制御系を設計・製作した。この検出系によれば、ダイオードによる整流回路の必要がなくなり、ノイズが低減されてフィードバック制御系の追従周波数が1kHzとなり、絶縁体表面の観察を可能にする。