著者
永吉 美智枝 斉藤 淑子 足立 カヨ子 高橋 陽子 谷川 弘治
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.150-156, 2020 (Released:2020-09-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究は,小児がん経験者が復学後の成長発達過程における生活上で経験した困難を明らかにし,心理社会的フォローアップのあり方を検討することを目的とした.18歳以上26歳未満の小児がん経験者14名を対象に半構造化面接を行った.分析の結果,94個のコードから37のサブカテゴリー,15のカテゴリー,6の大カテゴリーが生成された.困難を構成する要素は,学校生活と就労に関連していた.小児がん経験者には,[化学療法後の体力低下による長期間の授業の欠席]など【学校生活の大変さ】が生じていた.【友人関係・コミュニケーションの難しさ】においては,[体力低下や治療により友達との集団行動ができないもどかしさ]を感じ,【入院前の自分との違いに対する混乱・葛藤】が生じていた.また,【学習の遅れ】を取り戻すには時間を要し,治療による出席日数の少なさから【進学上の不利】を生じていた.【身体・心理的晩期合併症】は修学や成人以降の心理へ影響を及ぼしていた.小児がん経験者が学校生活を通して自己概念を再構築し,新しい役割を探求するプロセスにおける心理社会的問題について,教員と医療者が相談する体制をつくり,継続的に支援する重要性が示唆された.