著者
杉山 弘 斉藤 烈
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は、ブレオマイシン金属錯体による酸素活性化機構をモデル化合物や修飾オリゴヌクレオチドを用いて、有機化学的に詳細に検討し、錯体の構造、DNAの切断の分子機構の本質に迫り、その機能制御を行ない、新しいブレオマイシンを創製することを目的としている。今年度の研究によって以下に示す知見及び成果が得られた。1)ブレオマイシン金属錯体によるDNA切断機構の解明ラジカルの寿命を測定する化学プローブであるラジカルクロックを、ブレオマイシン金属錯体の反応サイトに導入し、それぞれの錯体により生成するラジカルの寿命について検討を行なった。その結果、コバルトによる反応においても鉄錯体と同様、4´位水素引きぬきにより4´位のラジカルが生成していることを世界に先がけて確認できた。この知見に基づいて新たな反応機構を提案した。2)ブレオマイシンコバルト錯体の構造解析錯体の構造が確定しにくい鉄錯体のモデルとして、コバルト-ブレオマイシンについてNMR,CDスペクトルなどの分光学的手段を用いて、総合的に配位構造についての検討を行なった。その結果、コバルトの錯形成により生成するグリーン、ブラウン錯体は錯体部分が逆の配位構造をとっていることが判明した。またこれに基づいて、ブレオマイシン-コバルト錯体とDNA6量体との結合モデルを構築し、AMBERによる力場計算を用いて、構造最適化を行ない、コンピューターグラフィックスにより視覚化した。