著者
藤井 のり子 斎藤 万寿吉 坪井 良治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.1245-1250, 2013-06-20 (Released:2014-10-30)

2012年12月20日から2013年2月4日の47日間に,当科で経験した風疹患者22名について,臨床症状,検査所見を検討し報告した.男性20名,女性2名.男性は20~44歳,女性は24歳,35歳であった.全例に発熱を認め,38°C以上は8名(36%)いた.播種性紅斑丘疹型の皮疹を全例で認め,20名(91%)に融合傾向がみられた.耳後部または顎下リンパ節腫脹は19名(86%)にあり,結膜充血は全例にみられた.成人風疹は小児例と異なり,臨床症状が重症であると思われた.全例で風疹IgM抗体を測定し陽性であった.初診時のIgM抗体が陰性であってもその後の再検査で陽性となった者が7名おり,症状出現初期ではIgM抗体は陽性となりにくく,およそ3日目から陽性率が上がると考えられた.詳細な問診から,市内にあるパチンコ店A店を風疹発症の2~3週間以内に利用した人が14名おり,閉鎖空間である店内での感染拡大が推測された.わが国では風疹ワクチン接種率の低い世代がおり,特に26~34歳男子の感受性者が多く,今回の罹患者もこの世代に集中していた.風疹は,2012年の中ごろから首都圏や関西で大流行しており,2013年2月現在,収束の兆しは認めておらず,今後の増加が懸念される.
著者
下方 征 斎藤 万寿吉 入澤 亮吉 坪井 良治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.12, pp.2371-2374, 2009-11-20 (Released:2014-11-28)

2003年11月から2007年10月までの4年間に東京医科大学病院皮膚科を受診した肛門部尖圭コンジローマ患者55症例を検討した.男性53例,女性2例.発症平均年齢は31歳であった.発症部位では肛門周囲病変と肛門管病変の合併が27例(49%)と最も多く,肛門周囲のみ23例(42%),肛門管病変のみ5例(9%)であった.また,55例中HIV感染患者は29例(53%)であり,非感染患者は18例(32%),未検者は8例(15%)であった.治療方法としては電気焼灼術を中心に冷凍凝固術,5-FU外用などを併用したが,完治に至った36名の平均治療期間は8.4カ月であり,19名(34%)は治療を自己中断していた.肛門部尖圭コンジローマはHIV感染を疑う疾患の一つであり,また治療期間が長くなるので十分な経過観察が必要である.