著者
竹野 一 斎藤 俊之
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

(1)ワラビ地下茎よりの有毒成分の単離。前報において、家畜のワラビ中毒の原因物質としてワラビ地下茎メタノ-ル抽出物より二種類の活性配糖体を単離し、それらをBraxinA1、A2と命名した。本研究では、さらにワラビ地下茎抽出物の液滴向流クロマトグラフィ-、Toyopearl、HW-40Sのカラムクロマトグラフィ-、Wakosil 10C18 HPLCを順次行い、モルモットに対する催血尿性を指標として,前述のBraxinA1、A2の他に、より活性の強い二つの画分が得られ、これらをBraxinB、Cと命名した。原ワラビ地下茎粉末よりの各画分の収量は、BraxinA1、A2では共におおよそ0.15%であるが、BとCではそれぞれ0.008%,0.007%と僅少であった。しかし、催血尿性においては、A1とA2は共に300-700mg/Kg(ip,一回投与)であるのに、BとCではそれぞれ36mg/Kg、28mg/Kgの少量で毒性を発現した。これらの成績より、ワラビ地下茎には少なくとも四種類の毒性分の存在が示唆された。なお本研究のBraxinCは、広野らのptoqiulosideと同一物質であることが示唆された。(2)ワラビの短期毒性、ワラビ地下茎粗毒性画分をモルモット腹腔内へ約60日間、連続投与した。一般病状としては、著しい体重の減少と脱毛がみられたが、赤血球、血小板数には著減がなく、白血球はむしろ増加の傾向を示した。剖検所見としては、腹腔臓器の癒着と出血、膀胱壁の浮腫と肥厚が顕著であった。しかし骨髄には異常はみられなかった。これらの成績からワラビ地下茎粗毒画分の短期毒性はその適用部位および膀胱への障害作用が主なものと考えられる。(3)ワラビ毒・BraxinCはラット腹腔肥満細胞に対してヒスタミン遊離作用を持たない。BraxinA1は肥満細胞に対して細胞膨化作用とヒスタミン遊離作用を示すが、BraxinCはいずれの作用も示さなかった。これらの成績は、BraxinA1とCとは作用発現機序のうえでも両者が異なることを示唆している。