著者
松田 文子 斎藤 公司 高井 孝二 坂本 美一 葛谷 健 吉田 尚
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.943-950, 1978-10-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

大腸菌, 変形菌, 黄色ブドウ球菌の感染により皮下にガス産生を来した糖尿病性壊疽の2例を報告した.症例1は42才女性, 糖尿病治療不十分の状態で左足背を火傷.2月後足背の壊疽, 蜂窩織炎が拡大し全身感染による中毒症状におちいった.蜂窩織炎は大腿から側胸まで上行し, 皮下に特有の気腫を触知し, X線上皮下ガス像を著明に認めた.壊疽部からは黄色ブドウ球菌と変形菌, コリネバクテリウムを検出した.糖尿病治療はインスリンで効を奏したが, エンドトキシンショックで死亡した.Scott丑の網膜症, び漫性, 結節性腎糸球体硬化症を合併した.下肢の全知覚鈍麻があり高度の神経障害も合併していたが末梢動脈の閉塞狭窄は認めなかった.症例2は56才男性, 20年前より糖尿病で経口剤治療下にあった.靴ずれの後左足第4趾が壊疽化し感染を合併した.X線で病巣周辺皮下にガス像を認め, 病趾切断を行ったが, 炎症が上行し全身感染による中毒症状でショック状態となった.直ちに膝下下腿切断術を行い救命し得た.壊疽部の培養から大腸菌と黄色ブドウ球菌を検出した.本症例は眼底出血続発による失明, 高度の神経障害と蛋白尿を合併していた.欧米および本邦を通じて, 糖尿病性壊疽に大腸菌, 好気, 嫌気性連鎖球菌, クレブシェラなどの感染が合併して類ガス壊疽様症状を呈した報告が21例ある.高度の神経障害を素地とし緩慢に進行するため診断が遅れがちで極めて予後不良であり, 適切な抗生剤の投与と外科的治療が必要とされ