著者
葛谷 健 松田 文子 入江 実 林 盈六 星 充
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.59-64, 1984-01-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

1968-1969年に100g糖負荷試験 (GTT) を施行した力士196名のうち, その後の経過を知りえた40名につき, 経過中の糖尿病発症の有無と, 諸因子の関係につき検討した. 初回GTT時の糖忍容力を1982年の日本糖尿病学会の基準に準じて正常型, 境界型, IGT, 糖尿病型の4型に分けた. 追跡期間中に空腹時血糖値が140mg/dl以ヒに上昇したものを糖尿病発症とみなした. 5-14年の経過中正常型19例から6例, 境界型8例より4例, およびIGT6例全例 (計16例) があらたに糖尿病を発症し, 初回糖忍容力低下の老しいものほど発症率は高かった. 初回GTT30分目の血清インスリン上昇量 (μU/m1) と血糖上昇量 (mg/dl) の比ΔIRI/ΔBGは糖尿病発症群では0.85土0.67 (n=16), 非発症群では1.39±0.79 (n=17) で, 糖尿病発症群の方が低値であった (p<0.1). 初回のΔIRI/ΔBGが1.0以下のものからの糖尿病発症率は65%(11/17) で1.0以上のものからの発症率31%(5/16) よりも高かった (p<0.1). 力士の引退率, 初回および追跡後の年齢分布, 肥満度は糖尿病発症群と非発症群との間で差をみとめなかった. すなわちカ士の糖尿病発症率は高く, かつ初回糖忍容力低下が著しいほど高率であった。糖尿病発症群の平均ΔIRI/ΔBGは非発症群よりも低かったがΔIRI/ΔBGが1.0以トのものからも相当数の糖尿病発症がみられた.
著者
葛谷 健 伊藤 千賀子 佐々木 陽 清野 裕 田嶼 尚子 土井 邦紘 布井 清秀 松田 文子 上畑 鉄之丞
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.173-194, 1992-02-29 (Released:2011-03-02)
参考文献数
66
被引用文献数
4

1) 疫学データ委員会では, 日本人における糖尿病の有病率と発症率に関する既発表の資料を収集し, 日本人糖尿病の有病率と発症率を推定し, それらの資料のデータを利用しやすい形にまとめて提供することを目的とした. 主要資料を選択して表にまとめた.2) 地域調査による成人の糖尿病調査から得られる情報はNIDDMの有病率にほぼ限られる. 尿糖二などで一次スクリーニングを行って陽性者のみに糖負荷試験を行う方法と, 全員に糖負荷試験を行う方法とがあるが, 糖尿病の有病率は後者で高い傾向を示した.1984年以前の報告では1970年の日本糖尿病学会基準で判定されているものが多く, 40歳以上の有病率は一次スクリーニングを行う方法では, 多くは1.3~4.7%であった. 1985年以後にはWHO基準で判定されるようになり, スクリーニングを行った場合, 40歳以上の有病率は2.1~5.4%, 直接糖負荷試験を行う方法では4~11%程度となった. 男女比は2: 1ないし1: 1で糖尿病は男に多かった. WHO基準では1970年の糖尿病学会基準よりも糖尿病と判定されるものの率は少なくなるはずであるが, それでも1990年代には約10%という高い値が報告されている.3) 18歳未満発症の糖尿病の発症率は10万人あたり年間0.8~2.3人で, 10~14歳に発症のピークがあった. 有病率はIDDMでは, 1万人あたりほぼ1.0人, NIDDMは約0.5人で, 両者を区別しない場合は0.9~1.5人程度であった.4) 原爆被爆者は約10万人が継続的に検診を受けており, 糖尿病に関してもよく調査されている. 糖尿病の発症について被爆の影響は否定されているので, そのデータは地域調査と同等のものと見なされる. 被爆者は現在43歳以上となり, その有病率は現在男9.9%, 女8.0%と推定される. 糖尿病有病率はあきらかに経年的増加傾向を示している.5) アメリカ (ハワイ, ロスアンゼルス, シアトル) に移住した日本人1世, 2世では日本在住者に比べて糖尿病が15ないし2倍に増えている. 8最近のシアトルでの調査では45歳以上の2世で男21.5%, 女16.0%が糖尿病であった.6) 政府刊行物の中では厚生省が定期的に行っている患者調査と国民生活基礎調査 (以前は国民健康調査) のデータに糖尿病が含まれている. これらは医療機関を受診中のものを対象としており, 得られた推定有病率は, 地域調査で得られた数値よりも低いが, 全年齢を扱っていると, 長年にわたり同じ方法で調査されているので経年的な推移が分かる点に特徴がある. 糖尿病の推定有病率はこの30年余りの間に激増した. 1987年の患者調査では副疾患としての糖尿病も加えると1.4%(全年齢), 1989年の国民生活基礎調査では1.1%であった.7) これまでの文献を通覧して, 今後の調査, 報告では特に留意すべき点として, 対象集団の年齢構成, 性別などを明確にすること, 既知糖尿病患者の取扱をはっきりさせること, 検査した集団が対象集団をよく代表しているかどうかの検討, 75g GTTで判定すること, 空腹時血糖値, 2時間血糖値の分布を示すこと, 受診しないものについても情報を集めること, などが望まれる.
著者
葛谷 健 青木 伸 一色 玄 奥山 牧夫 柿崎 正栄 門脇 孝 陣内 冨男 日比 逸郎 堀野 正治 松田 文子 宮村 敬
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.1047-1063, 1987-11-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
21

The Adhoc Committee on Diabetic Twins was organized in the Japan Diabetes Society in 1984 to collect data on diabetic twins in Japan. During past 3 years, the Committee collected data on 87 pairs of twins, one or both of whom had diabetes mellitus or glucose intolerance. Among them, 63 were monozygotic and 24 were dizygotic twins. Probands, who are defined as those who developed diabetes or glucose intolerance earlier, included 21 patients with IDDM, 56 with NIDDM, one case with diabetes of unknown type, and 9 with borderline glucose intolerance. Physicians in charge of diabetic twins were asked to fill out a form for detailed informations and some additional examinations when necessary. These data were gathered and analyzed by the Committee. The Committee ended the term in 1987 after 3 year's activity, and reports on main results obtained so far.(1) Concordance rate for diabetes in monozygotic twins was 45%(5/11) in IDDM and 83%(38/46) in NIDDM cases. In dizygotic twins, concordance rate was 0%(0/10) in IDDM and 40 %(4/10) in NIDDM cases. It was significantly higher in NIDDM than in IDDM, and in monozygotic than in dizygotic twins.(2) Concordance rate was higher in patients with the onset of diabetes above the age of 20 years than in those whose age of onset was below 20 years.(3) The period of diacordance was not shorter in discordant pairs than in concordant pairs.(4) In IDDM cases, about 90% lived together at the onset of diabetes, while more than 80% of twins lived separately in NIDDM pairs at the time of onset. This was independent of zygosity and whether they are concordant or discordant for diabetes. It is probably due to the difference of the age of onset of IDDM and NIDDM.(5) The frequency of positive family history and the prevalence of diabetes in parents and siblings other than co-twins were higher in NIDDM than in IDDM cases, irrespective of whether they were concordant or discordant.(6) The presence or absence of various complications agreed in 68-97% of concordant diabetic pairs. There were a few pairs discordant for the severity of retinopathy. In these pairs the difference in the duration of diabetes or in the degree of hyperglycemia would explain the difference in severity of retinopathy.(7) Glucose tolerance test in 6 co-twins of discordant pairs of IDDM revealed that 4 had normal glucose tolerance and 4 had normal insulin response. In 8 co-twins of discordant pairs of NIDDM, normal glucose tolerance was found in only 2 cases and normal insulin response also in only 2 cases.(8) The thyroid autoantibodies were more frequently positive in IDDM than in NIDDM patients, and the positive and negative tests agreed well between monozygotic twin pairs irrespective of concordance for diabetes. Data on islet cell antibody and HLA antigens were obtained in too few twin pairs to draw any substantial conclusions. All of IDDM patients who were tested for HLA antigens had HLA DR 4.
著者
松田 文子 白石 知代
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.86-100, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
9

L2学習者は複合動詞の意味を理解しようとするとき,前項動詞(V1)の意味と後項動詞(V2)の意味を組み合わせて理解する方略(「V1+V2ストラテジー」)を用いる傾向が強いが,それは必ずしもうまくいかないとする指摘(松田,2004)を踏まえ,本稿ではL2学習者の使用する「V1+V2ストラテジー」に働きかけられるような複合動詞の意味記述を試みた。事例として多義動詞「かける」を後項とする複合動詞「V-かける」(V=前項動詞)を取り上げた。「V-かける」は,「壁に絵を立てかける」のようにどこかに何かを斜めに依拠させる用法,「相手に水を浴びせかける」のように覆うようなイメージが強調される用法,また「赤ちゃんに語りかける」のように相手に向けてというニュアンスが強い用法などがあるが,本稿ではすべての「V-かける」の意味に本動詞「かける」の意味が反映していると捉え,それがどのように反映しているかを考察した。
著者
白石 知代 松田 文子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.159, pp.1-16, 2014 (Released:2017-03-21)
参考文献数
15

本稿は「ぬく」を後項とする複合動詞「V-ぬく」を取り上げ,コア理論を援用してその意味を記述したものである。これまで「V-ぬく」の大半は本動詞「ぬく」の意味が希薄化した統語的複合動詞であること,これらの「V-ぬく」には「貫徹」(例:走りぬく),「極度」(例:悩みぬく)などの用法があることが指摘されている(姫野,1999)。しかしこのような説明だけではL2学習者に納得のいく説明とはなりにくい。そこで本稿では本動詞の意味から複合動詞の意味推測が可能となることを目指し,本動詞「ぬく」の意味を「場所Yの中からYの外へXが移動することを表すが,その移動には必ず「抗う力」が伴う」と捉え直し,「ぬく」のコア図式を提示した。こうすることで,本動詞「ぬく」と語彙的/統語的複合動詞「V-ぬく」の意味の共通性を示すことが可能となる。
著者
松田 文子 田中 昭太郎 原 和秀 松田 伯彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.134-143, 1995-12-10 (Released:2017-07-20)

27名の児童が, 小学1年生から小学6年生まで, 毎年1回約30分, 時間, 距離, 速さの間の関係概念 (速さ=距離/時間) の形成過程を具体的操作を通して調べる縦断的研究に参加した。この児童達が小学5年生になって算数「速さ」を学習したとき, このような実験に参加しなかった児童と比較して好成績をあげたことから, その原因が探られ, そしてそれに基づいて, 一般に大変理解度が低いと言われている算数「速さ」の授業改善について, 若干の提言が試みられた。すなわち, (1) 文部省指導要領及び指導書の算数編におけるように, 異種の2つの量の割合として速さを提え, 単位時間当たりの道のりで表される, とするのではなく, 時間, 距離, 速さ, それぞれを1つの関係概念を形成する対等な3つの量として, それぞれに秒, m, m/秒, という計量単位を導入すること。 (2) 速さについての計量的な操作に入る前に, 具体的操作を通して等速直線運動を実感させ, (a) 時間, 距離, 速さの関係概念の論理構造と, (b) 同じ速さで走るということは, 時間や距離が異なっていても速さが同じなのだという速さの同値性に関する論理構造を, しっかり構成しておくこと。
著者
松田 文子 松田 伯彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
Japanese Psychological Research
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.9-17, 1981
被引用文献数
4

It was confirmed using the reproduction method and using both children of 8 to 13 years and adults as subjects that the anti-<I>kappa</I> effect could occur even for static stimuli under the specific condition where subjects were induced to form the set to use velocity rather than spatial separation as the cue for the time estimation. The present finding concerning the effects of the spatial separation of successively presented static stimuli on the time estimation was in line with the hypothesis of &ldquo;cue-selection sets&rdquo; which was drawn from the results of the first author's previous studies on a moving stimulus. But the developmental tendency of the anti-<I>kappa</I> effect still needs to be examined further.
著者
松田 文子 永瀬 美帆 小嶋 佳子 三宅 幹子 谷村 亮 森田 愛子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-119, 2000

本研究の主な目的は, 数と長さの関係概念としての「混みぐあい」概念の発達を調べることであった。実験には3種の混みぐあいの異なるチューリップの花壇, 3種の長さの異なるプランター3種の数の異なるチューリップの花束の絵が用いられた。参加者は5歳から10歳の子ども136名であった。主な結果は次のようであった。(a) 5, 6歳児では, 混んでいる・すいているという意味の理解が, かなり難しかった。(b) 数と長さの問の比例的関係は, 5歳児でも相当によく把握していた。しかし, この関係への固執が, 混みぐあい=数長さという1つの3者関係の形成を, かえって妨げているのではないか, と思われた。(c) 長さと混みぐあいの反比例的関係の把握が最も難しかったが, 8歳児は, 2つの比例的関係と 1つの反比例的関係のすべてを, かなりよく把握しているようであった。(d) これら3つの2者関係を1 つの3者関係に統合することは大変難しかった。8歳から10歳にかけて大きく進歩したが, 10歳でも約 25%の子どもしか統合を完了していないようであった。このような結果は, 小学校5年算数「単位量あたり」が子どもにとって難しい理由を示唆した。
著者
黄 河 松田 文子 三澤 哲夫
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.12-19, 2011

中国の金属加工労働者100名を対象に,日本の「蓄積疲労度自己診断チェックリスト」「自覚症しらべ」等を用いて疲労の状況を調査した。結果,調査対象者全体の傾向として,蓄積性疲労が基準値と比べてやや高いことが伺えた。自覚的な疲労感としては,上肢と下肢に訴えが集中していることがわかった。調査対象者の6割以上が「休み時間が短い」「休憩施設が無い」などの理由で,「昼休みで十分な休みがとれない」と回答し,7割以上が,昨年1年間で,風邪,腰痛などの病気をしたこともわかった。残業に関しては,「仕事の量が多い」「仕事が急に入ってくる」等の理由で,8割が日常的に経験していた。本研究では,労働者の健康を守るために,労働時間の短縮とともに,労働環境や人間工学的条件の改善が必要であることを明らかにした。(表1,図4)
著者
松田 文子 永瀬 美帆 小嶋 佳子 三宅 幹子 谷村 亮 森田 愛子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-119, 2000-06-30

本研究の主な目的は, 数と長さの関係概念としての「混みぐあい」概念の発達を調べることであった。実験には3種の混みぐあいの異なるチューリップの花壇, 3種の長さの異なるプランター, 3種の数の異なるチューリップの花束の絵が用いられた。参加者は5歳から10歳の子ども136名であった。主な結果は次のようであった。(a)5, 6歳児では, 混んでいる・すいているという意味の理解が, かなり難しかった。(b)数と長さの間の比例的関係は, 5歳児でも相当によく把握していた。しかし, この関係への固執が, 混みぐあい=数/長さという1つの3者関係の形成を, かえって妨げているのではないか, と思われた。(c)長さと混みぐあいの反比例的関係の把握が最も難しかったが, 8歳児は, 2つの比例的関係と1つの反比例的関係のすべてを, かなりよく把握しているようであった。(d)これら3つの2者関係を1つの3者関係に統合することは大変難しかった。8歳から10歳にかけて大きく進歩したが, 10歳でも約25%の子どもしか統合を完了していないようであった。このような結果は, 小学校5年算数「単位量あたり」が子どもにとって難しい理由を示唆した。