著者
野口 順蔵 斎藤 智夫 浅井 正友
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.620-624, 1960
被引用文献数
3

N-カルボチオフェニル-L-アスパラギン酸,N一カルボチオフェニル-L-アスパラギン酸-α-メチルエステル, N-カルボチオフェニル-L-アスパラギン酸無水物を加熱重合させてポリーレコハク酸イミド (ポリ-L-アンヒドロアスパラギン酸) を得た。レアスパラギン酸-β-ベンジルエステルから Leuchs 法でつくった α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエゴテルを氷酢酸+臭化水素で脱ベンジル化処理するか,またはポリ-L-アスパラギンを氷酢酸+塩化水素で処理しても同様にポリ-L-コハク酸イミドになることがわかった。これらのいずれの方法でつくった試料も全領域にわって一致した赤外線吸収を示し, 一般のポリペプチドに特有な吸収を示さず, コハク酸イミドの 1700cm<SUP>-1</SUP> (vco) と共通な特性吸収が現われる。 α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエステルを液安処理すると容易に, α-ポリ-L-アスパラギン酸をうる。一方ポリ-L-コハク酸イミドを 28% アンモニア水で処理しても容易にポリ-L-アスパラギンになる。α-アミド, β-アミドのそれぞれのアミド I, アミド II の赤外線吸収は接近しているため, これが α-アスパラギン, β-アスパラギンのいずれか一方, または両者の混合ポリマーであるかは赤外線吸収の比較からは判別が困難である。α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエステルを液安-ナトリウムで還元処理しても α-ポリーレアスパラギンになり, α-ニポリ-L-アスパラギン酸は得られない。また α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエステルの氷酢酸+臭化水素法や氷酢酸+ヨウ化ボスホニウム法の脱ベンジル化でもポリ-L-アスパラギン酸コハク酸イミドを通ると考えられる。現在 α-ポリ-L-アスパラギン酸と報告されている Berger らの試料もその赤外線吸収や溶解性はポリコハク酸イミドに類似しており, ポリ-L-ゴバク酸イミドはモノマー_あたり 1 分子の水をかたく結合しているのでポリ-L-アスパラギン酸と乖素分析値はまったく同一であり, 前者を誤認しているのでないかと疑われる。またポリ-L-コハク酸イミドを水酸化アルカリ水処理後塩酸で pH 1 にすればポリアスパラギン酸をうるが α-および β-結合の混合したコポリマーの可能性が強く, 純 α-ポリ-L-アスペラギン酸の合成は今後の研究を要する。
著者
斎藤 智夫 野口 順蔵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.469-471, 1961-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
6

D-グルコースを冷濃硫酸に溶解し,オキシ塩化リンと反応させたのち,反応液を冷工一テルに注入する。沈殿は結晶として得られる。この沈殿を水酸化バリウムで処理してD-グルコース-6-リン酸バリウム(mp157℃(分解))が理論の90%の収率で得られた。水酸化バリウムで遊離硫酸イオンのみを除けば,ビス-D-グルコース6,6´リン酸が得られ,これは等mo1の炭酸水素カリウムで中和すればD-グルコース-6-リン酸モノカリウム塩を与える。それでこの反応はD-グルコース2mo1とオキシ塩化リン1molが反応してビス-D-グルコース-6,6-リン酸が中間体としてでき,アルカリでの中和でD-グルコース1mo1が離れてD-グルコース-6-リン酸塩ができると思われる。グルコース-6-リン酸バリウムの赤外線吸収スペクトルやフェーリング反応も容易にすみやかに起ること,亜硫酸水素ナトリウムと沈殿を生ずること,明瞭なシップ反応を示すことなどからD-グルコース-6-リン酸バリウムの構造はピラノース環状構造でなく開環構造であると考えられる。