著者
福本 文代 佐野 洋 斎藤 葉子 福本 淳一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.1211-1223, 1992-10-15
参考文献数
20
被引用文献数
9

一般に 語の係り受け関係を解析する依存文法は 文を構成する要素間の2項関係を重視しているこのため 従来から提案されている手法の多くは 係り受け関係を判定するための言語的な制約として 格情報あるいは意味属性などを中心とした任意の2要素間の局所的な情報を用いている.しかしこれら局所的な情報だけでは 文全体の構造を決定するための制約として不十分であり 結果的に 可能な解釈として不自然なものまで得られてしまう.そこで本文法では言語的な制約に 係り受けの強度に基づく制約を課した.この制約は 文節とアークに付与された係り受けの強度を用いて2文節間の係り受け関係の有無を判定するものである.ここで 文筋に関する係り受けの強度とは その文節が修飾することができる相手の文節の種類 およびその文節が修飾を受けることができる相手の文節の種類を分類し それぞれ係り 受けの強さの度合いとして表したものであるまた アークに関する係り受けの強度とは 文節同士の結びつきの強さの度合いを示したもので これを用いて依存構造に現れるアーク間の制約を表している.係り受け関係の判定に意味素性を用いた文法と この文法に係り受けの強度に基づく制約を加えた文法とを作成し 文解析実験をった結果 解の数はこの制約を加えることで 約6割に抑えられていることがわかった.本稿ではこの係り受けの強度を用いた文法の記述について述べる.