著者
斎藤 邦行 菊入 誠 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.259-265, 1995-06-05

ダイズ29品種を供試し, 圃場条件下における日中の頂小葉傾斜角度(β)の品種間差異を検討した. 各品種のβは8月8日には10〜65度(平均39.8度), 9月4日には25〜80度(平均50.6度)と大きな品種間差が認められた. 8月8日にβの大きい品種が9月4日に大きいβを示すとは限らなかったが, 両日ともに三重大豆のβは最も小さかった. 三重大豆とβの大きい品種に属するエンレイを用いて, 牛育に伴うβの日変化の推移を調査した. 早朝小さかったエンレイのβは日射量の増加とともに急速に大きくなり, 9〜11時に最大となった後, タ刻になるに従い徐々に小さくなる日変化が認められた. 三重大豆のβはエンレイに比べて1日中小さく, 日変化する程度も小さかった. βの日変化で認められた最大値は, エンレイに比べ三重大豆は30〜40度小さく, 両品種ともに栄養生長期に比べ生殖生長期に大きくなった. 個体群上層部の相対光強度には日変化が認められ, 早朝小さく9〜11時に大さくなったが, その程度はエンレイに比べ三重大豆で小さかった. 木部水ポテンシャルの日変化を調査した結果, 三重大豆の木部水ポテンシャルは日中エンレイより約0.1MPa低く推移した. 以上の結果, エンレイに比べ小葉のβの変化する程度の小さい三重大豆では, 個体群内への光の透入が悪いとともに, 個体群上層の小葉は水分ス卜レスの程度が大きいことが明らかとなった.
著者
斎藤 邦行 柏木 伸哉 木下 孝宏 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.255-263, 1991-06-05
被引用文献数
13

早生,中生水稲計5品種を用いて,1988,89年の2ヵ年にわたり乾物総生産量,収量および収穫指数の比較を行い,その相違する要因を穂への同化産物の分配から解析した. 出穂期以降の穂,葉身,茎の部位別乾物重の推移を品種間で比較したところ,茎葉重は出穂期以後全品種で減少し,登熟後期には再び増加することが認められ,これには明らかな品種間差があった. 茎葉重の減少は,葉鞘と稈から穂への貯蔵同化産物の移行により,茎葉重の再増加は,稈への出穂後同化産物の再蓄積によっており,以上の乾物重の変化は,全糖濃度,デンプン濃度の変化に対応していた. 以上の検討の結果,早生品種の南京11号はアキヒカリに比べて,出穂後の乾物生産はやや小さいものの,出穂前貯蔵同化産物が多く,そのほとんどが大きいシンクヘ移行することにより収量が多く,収穫指数も高いこと;中生品種では出穂前貯蔵同化産物量には大きな違いはなく,むさしこがねは日本晴に比べて,出穂後の乾物生産が高いことにより収量が多いが,シンクの容量を越えた多くの同化産物が程に再蓄積することにより収穫指数が小さいこと;密陽23号は日本晴に比べて,出穂後の乾物生産が多いことに加えて,その大部分が穂へと移行することにより,収量,収穫指数が高いこと;密陽23号はむさしこがねに比べ出穂後の乾物生産はやや小さいが,シンクが大きく出穂前貯蔵同化産物,出穂後の同化産物の大部分が穂へ移行することによって,収量,収穫指数が著しく高いことが明らかになった.
著者
斎藤 邦行 杉本 充
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.91-93, 1998-03-05
被引用文献数
2

自然光下で生育した水稲の暗呼吸速度(Rr)の日変化と日変化に影響する要因を検討するため以下の3つの実験を行った.水田に生育した水稲を用いて, 18時から翌日18時までの24時間連続して暗黒下におけるRrの経時変化を測定した(実験I).Rrは暗期移行後急速に低下して翌朝までほぼ一定で推移し, 午前5次をすぎると, 生育初期には急速に低下, 最高分げつ期以降には上昇し("morning rise"MRと略記), 最大値を示す時刻は登熟後期ほど遅くなった.各時刻のRrは生育の進みに従い小さくなった.早朝から夕刻まで3段階の遮光処理を行い, 18時以降Rrの測定を行った結果(実験II), 遮光率が大きくなるとRrは低くなったが, 暗黒下においた個体(100%遮光)のRrは80%遮光区に比べ高くなった.ポット栽培し, 野外で孤立状態にある個体を早朝6時から, 18時まで3時間おきに5回, 明所から暗黒下のチェンバーへ移してそれぞれ3時間のRrの経時変化を測定した(実験III).各3時間の測定において, いずれの測定時刻においてもRrは測定開始直後急速に低下した後に上昇して極大値を示し, その後低下する経時変化が認められた.Rrの最大値は午前中に認められ, 夜間に比べ日中のRrは1.3〜2倍の値を示した.実験IIより暗呼吸速度は夕刻になるほど高くなると考えられたが, Rrの日変化のピークは午前中にみられ, この日変化とMRを示す時刻がよく一致したことから, Rrの日変化は主として内生的なリズムにより制御されている可能性が示唆された.