著者
大林 容二 太田 淳 新井 四郎
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結および乾燥研究会記録 (ISSN:02888289)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.92-104, 1960-07-17 (Released:2017-08-01)

凍結乾燥された細菌の保存性,ことに高い温度における保存の成績から,乾燥条件や保存条件の適否を検討した。使用した菌は乳酸菌,BCGおよびYeast等である。成績の重要な点は以下のようであつた。1)媒質としてのグルタミン酸ソーダの至適濃度は菌の濃度によつて異なり菌濃度を下げれば,媒質の至適濃度も低下する。また以上の至適濃度は被乾燥体の保存期間によつても左右される。すなわち,短期間保存の場合の至適濃度は必ずしも長期間保存の際の至適濃度と同一ではない。2)高温度の保存に堪える媒質として,BCGの場合およびL. bifidusの場合にグルタミン酸ソーダの優秀性が報告されたが,今回L. bifidusについての実験で,グルタミン酸ソーダに可溶性澱粉を加えることにより保存性が著しく高められることを認めた。3)乾燥面を真空中に保存する方が空気中に保存するよりも生菌の低下が少ないことは,従来,凍結乾燥についての定説となつているが,L. bifidusやL. bulgaricus等の嫌気性菌については,常圧の空気中に保存する場合の生残率は真空保存の場合の生残率に劣らぬ成績が得られた。