著者
安達 秀雄 斉藤 勝 沢井 芳男 有田 峰生 松本 稔
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結および乾燥研究会記録 (ISSN:02888289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.118-125, 1965-04-05 (Released:2017-08-01)

従来ハシカウイルスは感染力保持のため-40度(摂氏)以下の低温に保持されていた。1941年にHarst等により、感染組織乳剤を凍結乾燥することにより、比較的保存が容易となつた。近年ハシカワクチンが実用化されるにともない、その保存は-80℃に依存している。そこで実用上の問題として、凍結乾燥によるウイルス活性保持の研究が行われるようになった。1964年Greiffにより人血清アルブミンおよびラクトビオン酸カルシウムを1%づつ添加することにより、活性を保持することが報告された。私達もハシカウイルスの凍結乾燥について検討したので、その成績を以下に示す。
著者
大林 容二 太田 淳 新井 四郎
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結および乾燥研究会記録 (ISSN:02888289)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.92-104, 1960-07-17 (Released:2017-08-01)

凍結乾燥された細菌の保存性,ことに高い温度における保存の成績から,乾燥条件や保存条件の適否を検討した。使用した菌は乳酸菌,BCGおよびYeast等である。成績の重要な点は以下のようであつた。1)媒質としてのグルタミン酸ソーダの至適濃度は菌の濃度によつて異なり菌濃度を下げれば,媒質の至適濃度も低下する。また以上の至適濃度は被乾燥体の保存期間によつても左右される。すなわち,短期間保存の場合の至適濃度は必ずしも長期間保存の際の至適濃度と同一ではない。2)高温度の保存に堪える媒質として,BCGの場合およびL. bifidusの場合にグルタミン酸ソーダの優秀性が報告されたが,今回L. bifidusについての実験で,グルタミン酸ソーダに可溶性澱粉を加えることにより保存性が著しく高められることを認めた。3)乾燥面を真空中に保存する方が空気中に保存するよりも生菌の低下が少ないことは,従来,凍結乾燥についての定説となつているが,L. bifidusやL. bulgaricus等の嫌気性菌については,常圧の空気中に保存する場合の生残率は真空保存の場合の生残率に劣らぬ成績が得られた。
著者
海老名 敏明 鹿内 健吉 伊藤 隆 梅田 義彦
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結及び乾燥研究会記録 (ISSN:02888289)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.16-24, 1960-07-17

現在我々の行つている乾燥BCGワクチン(以下乾ワクと略す)の製造では,箱型乾燥機内でアンプル中の液体ワクチンが一且凍結真空乾燥された後,空気を入れて真空を破つて取り出され再び多岐管式乾燥に取りつけて真空に熔封される。此の際真空下にあつた乾ワクは一時空気にふれ再び真空下に戻される事になる。この乾ワクにふれる空気の湿度や,空気と接触している時間の長さが乾ワクの生菌数及び保存性に如何に影響を及ぼすか検討した。1)箱型乾燥機内で乾燥が終つた時,真空下でアンプルにゴム栓を施し,一時的に封じ,之を箱外に取り出し最終的に熔封を行つた乾ワクと,従来の方法で短時間(10分以内)空気にふれさせた後,真空熔封されたものの生菌保性を氷室保存12ケ月比較観察したが,両者間に著差を認め得なかつた。2)箱型乾燥機からとり出されたアンプルを一部は直ちに真空熔封し,他は相対湿度約25.5%の容器中に貯え,2時間後に真空熔封した。この両者の製造直後の生菌数は,後者では明らかに滅少して居た。又15時間上記容器中に放置した群を加えこれら3種の乾ワクの生菌保存性を比較したが,氷室保存では製造直后の生菌をよく保持したが,37℃保存で空気とふれた時間に比例して生菌揖失の度が増した。3)硫酸処置により5.2%, 56.8%, 88.5%の含湿空気を作り,之らに乾ワクを2時間ふれさせた後,真空熔封し,各乾ワクの生薗保存性を比較したが,氷室保存で製造直後の生菌数をよく保持し得たが,37℃保存で高湿度の空気にふれたもの程生菌損失の度合は大きかつた。尚各乾ワクの含水度はふれた空気の湿度に比例して多くなつて居た。4)アンプル熔封時,空気,酸素,窒素等のガスをアンプル中に送入し,再び真空状態に戻した後アンプルを真空熔封した場合,その乾ワクの生菌保存性は窒素群が他群より多少優れて居た。