- 著者
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新井 浩子
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は、昭和初期における文部省社会教育局の活動実態を明らかにする新資料を整理・分析し、近代社会教育行政の整備・展開過程に関わる貴重な資料として公開することを目的としたものである。昭和初期の社会教育政策についての先行研究は、社会教育局の掌握内容の変遷、組織化過程、代表的指導者の理論研究が行われているが、具体的な社会教育活動を明らかにする研究はほとんどない。本研究代表者は、この未開拓分野に関する新資料を発掘した。新資料は、社会教育局が創設された1929年前後の時期に社会教育を牽引した指導者たちへのインタビュー調査の記録テープ全38本である。調査は1960年代に財団法人日本女性学習財団(当時:財団法人大日本女子社会教育会)によって実施されたものである。本研究では、オープンリール型テープだったものをデジタル変換するとともに、内容をテキスト化して資料として利用可能な状態にした。併せてインタビューの証言者に関する資料収集を行い、社会教育指導者としての役割を明らかにした。約17時間に及ぶ記録テープには、18名の証言が収められている。それは具体的には、社会教育局長、社会教育局職員、県社会教育主事、日比谷図書館長、博物館研究者、青年団指導者、ボーイスカウト指導者、女学校校長、民衆娯楽関係者などによる証言である。証言内容と証言者に関する情報分析から、これまでほとんど知られていなかった民衆娯楽、文部省社会教育局、図書舘・博物館の社会教育施設、府県レベルでの社会教育活動の実態を確認することができた。その結果、1920~30年代に文部省社会教育局が各領域の指導者と密接な関係を結びつつ、その活動を通して社会教育行政の整備を推進したことが明らかになった。今回の調査・研究によって明らかになった事実、昭和初期文部省社会教育活動の歴史的意義については、論文・学会発表において公表していく予定である。また本研究によって整理した証言テープは、現在、(財)日本女性学習財団と公開方法を検討中である。