- 著者
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新倉 純樹
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.73-83, 2013-09
論説(Article)近年、日本では急速に少子高齢化が進行し、少子高齢化によって、多くの弊害が発生している。その一つが本稿の主題でもある少子高齢化によって生じる、財政上の世代間不均衡の問題である。世代間不均衡の問題は、少子高齢化によって、財政における高齢者向け支出が拡大し、その支出を支える現役世代が減少していることに端を発している。また、高齢者向け支出が拡大し、日本の財政運営の持続可能性が危ぶまれる中、抜本的な解決策が講じられているとは言い難く、その負担は将来へと先送りされていることもまた大きな問題である。世代間の不均衡の問題を考えるにあたり、まず人口構造の変化、すなわち高齢者層の相対的な増加によって、高齢者層の政治的発言力が高まった結果、高齢者層向け支出が拡大する一方、若年者層向け支出が縮小されるという政治的なバイアスがかかっている。さらに、高齢者層の政治的発言力の上昇は、人口構成の問題だけでなく、投票率にも表れている。若年者層よりも、高齢者層のほうが、投票率もまた高い状態にあるからである。本稿ではそれらのことを踏まえ、世代別の政治的発言力を人口構成上の観点からだけでなく、世代別の投票率も加味することによって分析を行っている。2009年に行われた衆議院議員総選挙の世代別投票率を用いて、若年者層向け支出として児童福祉費及び義務教育費を、老年層向け支出として老年福祉費に対してそれぞれどのような影響を与えるか、実証的な分析を行った。その結果は、若年者層投票率の上昇が若年者層向け支出の拡大を、高齢者層投票率の上昇が高齢者向け支出の拡大を促す、というものであった。本稿では、以上のような実証分析の結果を踏まえ、若年者層投票率が低いことに財政上の世代間不均衡の問題を深刻化させる原因の一端があることを指摘する。そして、世代間不均衡を解消するために、抜本的な対策が必要であることを主張している。