著者
田川 道人 新坊 弦也 富張 瑞樹 渡邉 謙一 古林 与志安
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.e202-e207, 2023 (Released:2023-08-25)
参考文献数
25

症例は8歳4カ月のバーニーズ・マウンテンドッグ,去勢雄であり,肺腫瘤の精査を目的に帯広畜産大学動物医療センターを紹介受診した.切除組織の病理学的検査にて肺原発の組織球性肉腫と診断し,第36病日よりロムスチンによる術後抗がん剤治療を行った.ロムスチン5回目投与時に右兼部に5cm大の皮下腫瘤を認め,細胞診にて組織球性肉腫の転移病変と診断した.ドキソルビシンを使用したが効果はみられず病変は11cm大まで増大した.第172病日よりリン酸トセラニブの投与を開始したところ転移病変は急速に退縮し1.5cm大まで縮小した.しかし第301病日に転移病変の再増大と胸水貯留を認め,ビンクリスチンを投与するも反応なく第318病日に斃死した.一時的ではあったものの,リン酸トセラニブの劇的な効果がみられた稀な症例と思われた.
著者
新坊 弦也 田川 道人 山本 悠平 宮原 和郎
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.443-448, 2018-08-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
24

11歳8カ月,避妊雌のミニチュア・ダックスフントが血小板減少,多発性の脾臓腫瘤の精査のために来院した.症例は,来院前日に突然の左前後肢の麻痺,左眼の視覚障害を呈した.血液凝固系検査ではD-ダイマーの上昇が認められた.腹部超音波検査では脾臓に低エコー性を呈する血流を欠く楔型の病変が複数認められた.頭部MRI検査では,右側頭葉を中心とした脳梗塞と合致する所見が得られた.以上より,脾梗塞,脳梗塞と診断し,血栓予防療法を行った.その後の経過は良好であり,第118病日に治療終了とし,その後11カ月経過した現在も再発は認められていない.本症例は,過去に膵炎に類似した臨床症状を呈しており,また血栓傾向を引き起こす他の疾患は否定的であったことから,多発性の梗塞病変は膵炎に起因する凝固亢進状態に伴うものであったと考えられた.