著者
新垣 大地 及川 卓郎
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.5-12, 2021

<p>沖縄県黒毛和種は,暑熱ストレスに対する順化により空胎期間(DO)を減少させるという仮説を検証するため,体感温度順化の効果について検討した.沖縄県内で2008年から2016年に分娩した雌牛の記録からDOを抽出した.分娩後のDOは21d以下を除き,22dから50dを50d,250d以上を250dと設定した.対象地域は沖縄島地域と八重山地域とし,温湿度指数(THI)を参考に暑熱期を上昇期と下降期に,その他の時期を熱的中立期に分けて分析した.下降期のDOを暑熱ストレスに順化済みの反応と仮定し,この時期と上昇期の未順化時期を比較した.線形モデル分析では,2乗平均平方根誤差(RMSE)を用い上昇期のDO推定値の誤差が最小となるTHI補正値を算出した.その結果,上昇期に該当するTHIで+7程度の補正値が得られ,上昇期は下降期よりTHI +7だけ温度未順化によるストレス反応がDOにおいて示された.本研究の結果,暑熱ストレス発生時期のうち,特に上昇期に注目した研究調査がDOの改善に有効であることが示された.</p>
著者
新垣 大地 及川 卓郎
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.91-98, 2019

<p>本研究は,沖縄県黒毛和種の分娩後空胎期間(DO)に対する暑熱ストレスの影響について明らかにする目的で行った.DO は 21 d 以下を除外し,22 d - 50 d を 50 d,250 d 以上および欠測値を 250 d と設定した.分娩年は 2008 年から 2012 年の 5 年間,産次は 6 産目までとし,制限後は農家 194 戸における雌牛 13,610 頭分の分娩記録 33,777 件であった.分析モデルは分娩季節,分娩月,分娩日の温湿度指数(THI)の共変量またはTHI の主効果を含む 4 モデルである.分娩季節の分析では夏(123.85 d)に最高値を,秋(119.26 d)に最低値を示した.分娩月の分析では 6 月(127.58 d)に最高値を,4 月(115.65 d)に最低値を示した.THI を共変量とした時,THI 70 - 71 で最低値(144.86 d)を示した.THI を主効果とした時,THI 56 - 60 で最高値(124.13 d)を,THI 61 - 65 で最低値(118.83 d)を示した.これらのモデル分析により暑熱時期に入る 6 月または THI 70 以上での DO 増加が確認された.秋と春の分娩後には DO が減少するため,繁殖適期であると考えられた.</p>