- 著者
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伊藤 健
小嶋 寛明
新宮原 正三
清水 智弘
- 出版者
- 関西大学
- 雑誌
- 挑戦的研究(萌芽)
- 巻号頁・発行日
- 2018-06-29
セミやトンボなどの翅には無数のナノ構造が表面を埋め尽くしており、その表面は抗菌性を示すことが近年報告された。本研究では、その抗菌メカニズムを解明するために、人工的に様々な条件を制御したナノ構造を作製し、構造や物理化学的性質と抗菌との関係を明らかにしようとしている。初年度は、安価かつ大面積にナノ構造を作製するため、コロイダルリソグラフィとメタルアシストエッチングを用いることで2インチ角のシリコン基板に対して任意の寸法をもつ円柱状の構造物をアレイ状(ナノピラーアレイと呼ぶ)に配列させることに成功した。作製法を以下に記す。まずSi基板上にナノサイズの樹脂ビーズを単層配列させる。樹脂ビーズの直径により構造の間隔を決定できる。次に、酸素プラズマをこの基板に当てることで、樹脂ビーズを徐々に削っていく。この時の樹脂ビーズの直径がナノ構造の直径に相当する。次に、メタルアシストケミカルエッチングの際の触媒として働く金を上述した基板に薄く堆積させる。続いて、基板を特殊なエッチング溶液に浸すことでシリコン基板が深さ方向に異方的にエッチングされる。エッチング溶液に浸している時間で、ナノ構造の高さを制御することができる。最後に、金と樹脂ビーズを除去することでシリコン単体からなるナノ構造を形成することができる。この技術を用いることで任意のピッチ、直径、高さを持つナノ構造を得ることができた。この技術を利用して様々な幾何学的な条件を変化させたナノ構造を作製し、その基板に対して抗菌評価を実施した。抗菌評価法にはJIS Z2801(フィルム密着法)を適用し、菌体として大腸菌をターゲットに抗菌評価を行った。その結果、抗菌性を示す条件を得ることができ、特許の申請に至った。