著者
山室 真澄 鑪迫 典久
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

各国の水産物から揮発性が高く、かつ難水溶性である人工香料の検出報告が相次いでいる。さらには、韓国の漢川河口では奇形魚が頻繁に漁獲されるようになり、原因として人工香料が疑われている(2016年4月10日中央日報日本語版)。本研究では、水溶性ではない人工香料が魚介類に取り込まれるメカニズムとして、世界的にも使用量が増えている柔軟剤に含まれるマイクロカプセルの形で人工香料が取り込まれているとの仮説を立て、その検証を目的とした。柔軟剤のマイクロカプセル中にどのような成分を香料として使用しているかは、ほとんど公表されていない。このため、市販されている柔軟剤10品について人工香料を網羅的に調査した研究を参照し、検出されていた成分の標準試薬を検索した。現在、GC/MSで標準試薬の分析手法の確認を行っている。市販の柔軟剤(K社製、L社製、P社製の3種)およびフレグランススプレー(カプセルある・なし)について、カプセルの生態影響評価を試みた。カプセルの有無による毒性の違いを明らかにするため、柔軟剤を超音波洗浄機処理、超音波抽出機(ホモジナイズ)処理、風乾処理、熱風乾燥処理などを実施し、それぞれ処理前と後のサンプルで生物試験を行った。カプセルの有無は光学顕微鏡下で確認した。生態影響はメダカとミジンコを用いた曝露試験で確認した。メダカ曝露試験はOECDテストガイドライン203に準拠を改変して、より感受性の高いと思われるヒメダカの孵化稚魚を使用した。ミジンコ曝露試験はOECDテストガイドライン203に準拠してオオミジンコを使用した。先述の柔軟剤サンプルについて、様々な方法でカプセルの有無による影響の違いを調べたが、現時点では両者に明確な差は認められなかった。香料成分のメダカに対する毒性が弱いためと考えられる。ミジンコ曝露実験については再現性を得るため、現在、繰り返し試験を行っている。
著者
伊藤 盡 松本 涼 杉本 B.Jessica 井口 篤
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

平成29年度研究成果は以下のとおり:目標1:「世界中の研究者等が利用できる北欧神話受容データベース構築」については、データベース作成用ソフトウェアの購入、データ項目の入力を開始した。9月28日(木)の第1回ミーティングにおいて、役割分担の確認、2018年アイスランドでの国際サガ学会開催に合わせ、アイスランド大学でのシンポジウム開催、データベース内容が決定された。研究活動の方向性を一致させる意義があった。龍谷大学での第2回ミーティング(11月4日(土))では、シンポジウムの打合せ、研究活動計画が決定した。研究内容について詳細に検討され、漫画現物の回覧を行った。データベース化への問題点が明確となり、データベースの閲覧環境の具体的なイメージを固められた点が重要な成果であった。11月5日(日)に京都国際マンガミュージアムにおいて画像撮影と情報収集を行った。これまでになく重要な情報収集ができ、意義深い活動であった。目標2:「資料収集と整理」について、現在収集画像は100を超えている。データベース用データへの置換前のリスト状態にある。これまで省みられなかった学問的資料・情報が蓄積されつつある。目標3:「文献学的、歴史学的、メディア論的、比較文学的分析」については、データ画像収集の際に収集者が記載する註を共有することで、各研究分担者の考察の一助としている。本研究に基づき、2018年3月6日(火)アイスランド大学中世学科の主催で、ハラルドゥル・ベルンハルズソン博士の司会により研究代表者が講義 ‘Japanese Reception of Old Norse Mythology’を行った。質疑応答はその後のレセプションまで続いた。また8月に本研究プロジェクトの報告会が催されることを告知し、興味を持つ大学院生や研究者が詳細を尋ねてきた。本研究の重要性が海外で高く評価されることが証明された。
著者
牟田 和恵 丸山 里美 岡野 八代
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本年度は、第三者からの精子提供によって女性カップルのもとに生まれた子について、インタビュー調査の設計を行うとともに、7ケースの事例調査を実施した。またフランスにおいては、関連法についても調査した。事例調査は、3ケースは日本、3ケースはフランス、1ケースはニュージーランド(調査自体はイギリスで実施)のものである。フランスは2013年に同性婚が法制化され、同性カップルの養子縁組も可能になったが、同性カップルの生殖補助医療の利用は認められておらず、現政権のもとで議論がなされている最中である。ニュージーランドは、調査対象者が子をもうけた時点では同性婚は法制化されていなかったが(2013年に法制化)、生殖補助医療の利用は可能であった。各国の法制度のあり方と、それと関連はするが相対的に独立した当該家族に対する社会の許容度は、情報開示と子のアイデンティティのあり方に強く影響するが、それだけではなく、子の発達段階、家族の居住形態、精子提供者をどのように得たかなどによってもかなり異なっていることが明らかになった。同性婚はもとより、同性カップルの生殖補助医療が認められておらず、当該家族に対する社会の許容度もきわめて低い日本では、同性カップルが子をもうけるということ自体が、金銭的にも社会資源の面でも特権的な階層にしか可能ではない。それにもかかわらず子をもうけたカップルが直面した・している困難と、その際に取った戦略、そして同様の問題が他国においてどのように生じているかに関する事例を収集することによって、当該家族のもとで育つ子の法的権利・福祉のあり方を検討していくための基礎的な整理を行った。
著者
湯川 やよい
出版者
東京女子大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、非触法ぺドファイル(子どもを性的な対象とする小児性愛者のうち、性加害を実行したことがない人々)の実態を、当事者の語りから読み解く仮説生成型の研究である。2年目にあたる2018年度は、特に(1)前年度の国内調査についての海外発表(中間報告)、(2)海外調査、(3)関連領域における調査法関連での文献調査とまとめ、(4)国内での継続調査を行った。まず、(1)については、国際社会学会(7月、トロント)において報告を行った。日本国内の非触法ぺドファイルの自己形成が、北米中心に発信される診断文化の文脈とセクシュアリティのポリティクスの交差のなかで独自の位置取りを占めることを報告し、当該テーマにおいて先駆的な実践が報告される西欧非英語圏で活動する関連研究者と議論できたことは、貴重な成果と言える。また、ナラティブ分析の方法という観点から英語圏言説の分析を行った論文を共著『自己語りの社会学』に収録した(8月に出版)。(2)については、米国フィラデルフィアおよび米国シアトルにおいて、関連研究者とのディスカッションおよびフィールド調査を行った。現地の運動当事者との面会は実現しなかったものの、関係者への間接的な調査は行うことができた。(3)については、周辺関連領域における性的マイノリティ一般の調査技法にかんする論稿をまとめ、発表した(和文、2019年3月)。また、(4)国内調査についても継続インフォーマントへの聞き取りを行っている。
著者
阿部 顕三 安達 貴教 花薗 誠 大湾 秀雄
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本年度は、第1に日本酒造組合中央会において、日本酒の税制、日本酒業界の人材、流通、輸出などについて聞き取り調査を行い、今後のモデル構築・分析や実証分析のための有用な情報を収集した。税制に関しては、新酒税法や新組合法と基準販売価格制度との関係を明らかにした。人材に関しては、日本酒造杜氏組合連合会傘下の組合員数の減少とそれに対する対応策を確認した。また、流通に関しては小規模の酒蔵と大規模な酒蔵の清酒の流通の違いについて明らかにした。さらに、輸出面では日本とEUの経済連携協定の発効が日本酒産業の国際的な競争力に与えうる影響について示唆を得た。第2に、グローバル経済における日本酒産業の国際競争力などを分析するための理論モデル構築を進めた。日本酒は、原材料となる米にも多くの種類があり、また生産工程も複雑であることなどから、製品の差別化の程度が非常に高い財であることを考慮に入れ、従来の独占的競争モデルを拡張する形でモデル構築を進めた。中間投入物として差別化された米導入し、それによって最終生産物の日本酒も差別化されるような特徴を導入した。また、複数の生産工程を導入し、使用する生産工程によっても差別化が生じるような可能性も考慮した。さらに、少数の大規模な生産者(酒蔵)と多数の小規模な生産者(酒蔵)が共存し、競争しているような市場も想定し、そのような生産構造や市場構造が日本酒の国際競争力に及ぼす影響を理論的に考察するための基本モデルの構築を行った。
著者
有吉 慶介 脇田 昌英 美山 透 吉田 聡
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

平成29年度の貫通観測に関して,観測準備として,気象センサーの防水防爆対策として既成のプラスチックケースからアルミケースへの差し替え,ソーラーパネルの独立固定方式への変更,表層連続観測用のドラム,UWTVへのCTD取付工具などを購入した.GNSS-Rの観測については,当初の計画には盛り込まれていなかったが,海面高度の精密観測をする上で必要なため,九州大学からの協力を得て実施することにした.これらの観測機器を用いた他,GNSS-Rや表層連続観測装置などを借用手配することにより,地球深部探査船「ちきゅう」が清水港に停泊している期間を狙って,2017年11月30日~12月1日に気象センサー,海水の表層・鉛直のCTD装置,GNSS-Rの設置,2018年1月10日~12日に鉛直CTDと表層連続観測の電池交換を兼ねた動作確認,2018年2月27日に観測機器の撤収を行った.回収データを解析した結果,どのセンサーも,動作環境などで問題があったものの,きちんと設定すれば同時連続観測が出来ることを確認した.これらの成果は, Ocean Sciences Meeting, Blue Earth Science Technology 等で発表した他,マサチューセッツ工科大学(MIT),カーネギー研究所,ハーバード大学,アメリカ海洋大気庁 (NOAA) などでもセミナーとして発表した.また,来年度に開催する国際学会(JpGU, AOGS) でもセッションを提案し,採択された.さらに,上記の学会の場を通じて,貫通観測に関して,国際学術誌での特集号も組まれることとなるなど,国内外での反響も得られた.
著者
渋谷 綾子 石川 隆二 高島 晶彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究では,1. 古文書の分類と製紙材料の構成物としてのデンプンなどの種類・量・密度等の対象比較による紙の質的比較解析,2. DNAによる和紙の製造手法・地域・時期の分析,3. これらの分析手法を統合した「古文書科学」という研究分野としての可能性探索,という3つを軸とする。2018年度は,資料調査と混入物の分析,現生サンプルのDNA分析による紙材料の識別実験,混入物の標準的データの抽出を試みる。混入物の分析は,(1)資料調査と紙の繊維の分析,(2)混入物の分析,(3)多角的研究,(4)文書研究の4つを柱として設定する。料紙の成分特定については,分担者(石川)とともに現生の紙や原料サンプルのDNA分析を実施し,繊維や糊などの構成物の由来材料を特定する。今年度において,分析・検討を行ったのは主に次の項目である。すなわち,東京大学史料編纂所所蔵「中院一品記」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),国立歴史民俗博物館所蔵「廣橋家旧蔵記録文書典籍類」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),「松尾大社所蔵資料」および米沢市上杉博物館所蔵「上杉家文書」の顕微鏡撮影と構成物の解析(高島・渋谷),現生の紙原料サンプル(カジノキ)のDNA分析(石川・渋谷)。また,AWRANA2018(フランス,2018年5月)や日本文化財科学会第35回大会(2018年7月),第33回日本植生史学会大会(2018年11月),Workshop on Integrated Microscopy Approaches in Archaeobotany 2019(イギリス,2019年2月)では研究手法の紹介と結果の見込みについて報告し,書籍『Integrated Studies of Cultural and Research Resources』では2018年度前半までに得られた研究成果について報告した。
著者
中村 太一 土肥 拓生
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究は,アジャイル開発のチームメンバ,プロダクトオーナーおよびファシリテーター に求められるマネジメントスキルを修得するため,開発プロセスにおいて実行されるプラクティスを疑似体験するロールプレイ演習システムを開発する.具体的には、(1) アジャイル開発プロセスで生み出す価値の量をシミュレーションにより算出するため,システムダイナミックスモデルと待ち行列ネットワークモデルを組み合わせたアジャイル開発プロセスモデルを構築し,(2) アジャイル開発で生み出される価値の量を定量的に算出するために、アジャイル開発プロセスにてより多くの価値を生み出すために実行されるプラクティスと開発プロセスの生産性を低下させる要因の関係を定式化し,(3) 正統的周辺参加の学習論に基づき,開発業務という文脈の中で学習者がアジャイル開発のマネジメント知識の定着を図るロールプレイ演習シナリオを開発する.2107年10月,PMI(Project Management Institute)からPMBOK; Guide Sixth Edition とAgile Practice Guideが刊行され,顧客の要求が確定している下で費用とリリース時期を遵守するマネジメントと顧客が求める価値を繰り返し提供し続けるアジャイル開発のマネジメントの関係が記述されているが、二つのマネジメントの使い分けについて確定した知見はない.このような状況に鑑み、本研究の成果を実装したロールプレイ演習で、学習者個々人が開発実務においてアジャイル開発と伝統的な開発のマネジメントを使い分ける能力を涵養できる学習環境を提供する意義は大きい.
著者
福原 長寿
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究では、産業プロセス排出のCO2を、CO2の分離操作なしに空気成分と混在したまま、25℃程度の常温域で高効率・高選択的に、かつ大量にCH4に変換する触媒反応場を創製する。そして、この反応場の触媒機構を解明し、CO2資源化技術の新学理を開拓する。研究のポイントは、構造体触媒反応場によってCO2を常温域で効率的なメタン変換を大量規模で行なうことである。通常の報告例では300℃程度で実施されるCO2のメタン化反応を、常温域で実施することは世界で未だ報告例はないことから、本研究で開拓する技術によって世界に先駆けたCO2の資源化ルートを開拓する。
著者
稲永 由紀 吉本 圭一 猪股 歳之
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究では、高等教育機関の地域配置および高等教育の地域社会的効用について、高等教育あるいは高等教育機関の地理的影響範囲(高等教育「後背地」)の理論モデル確立を目指すべく、既存指標の収集、いくつかの地域での関係者へヒアリング等によって、影響評価の候補となる主観的/客観的指標を収集し、検討する。これは、研究者の研究・勤務経歴の偏り(特に都市/国立/研究大学)に起因するであろう高等教育領域の研究知の偏在を問い直す、オルタナティブな高等教育研究領域を切り開く企てでもある。
著者
河合 孝尚
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は科学者の不正リスク(動機・機会・正当化)要因の発生メカニズムを解明し、不正行為に対する抑止力を向上させることで不正行為を未然に防止することが出来るのではないかと着想し、そのための新たな倫理教育プログラムの開発を行うことを目的としている。平成29年度では、過去に行われた不正行為に関する事例や関係法令等を分析することで、不正行為に及んだ原因や問題点等を明らかにし、科学者の不正リスク要因を特定するための過去の不正行為に関する事例分析を主に行った。国内での研究不正行為に関する事例報告は情報が乏しく件数が少ないので、本研究では主に海外の研究不正行為事例を調査した。調査したのはアメリカ国立科学財団(NSF)の調査報告書2754件、アメリカ研究公正局(ORI)報告書102件、web上の研究不正事例に関する情報65件であるが、本研究で扱うデータとしてはデータの信頼性を考慮してORIの研究不正行為に関する報告書の情報102件を分析対象とすることとした。本研究ではORIの研究不正行為に関する報告102件を対象に変量解析を行った。ORI報告書から読み取れた項目として性別(女35件、男63件、欠測4件)、職種(教授7件、准教授24件、研究員22件、ポスドク20件、大学院生16件、その他9件、不明4件)、不正行為の種類(改ざん11件、ねつ造39件、盗用94件、重複あり)、所属施設(大学49件、病院14件、研究センター7件、企業1件、不明1件)について二変量解析を行い、それぞれの項目間の関連を検討した結果、特に項目間に関連は認められなかった。つまり研究不正行為は職種や性別等に関係せず誰でも起こす可能性があり、外的な要因ではなく心理的要因等の内的要因が大きく影響していると考えられることがわかった。
著者
宇佐美 誠 大屋 雄裕 松尾 陽 成原 慧
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究計画は、人工知能(AI)が著しく発達した近未来の社会的経済的状況を見据えて、新たな分配的正義理論を提案するとともに、個人の自由への新たな形態の脅威に対して理論的応答を提示することを目的とする。この研究目的を効果的に達成するため、正義班と自由班を組織しつつ、相互に連携して研究を実施する。補助事業期間を基礎作業、構築・展開、総合・完成という3つの段階に分け、計画的に研究活動を推進する。
著者
山口 典之 樋口 広芳 辻本 浩史 井上 実 森 さやか 佐々木 寛介
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

1. 空中餌資源を把握するための飛翔性昆虫採集ユニットを作成し、ドローンに搭載して採集を行った。ドローンの飛行は安定しており、比較的高速 (ca. 40km/h) で行えたが、捕集できた昆虫類は少なかった。空中餌資源の分布や量がかなり疎であることが理由なのか、捕集システムに大きな問題があるのか検討を重ねる必要が残った。2. ハリオアマツバメの GPS 遠隔追跡を順調に実施し、データを蓄積した。巣からの採食トリップの空間スケールや高頻度利用域の解析を進めた。個体によっては時折、数10km以上の遠方まで直線的に移動していることも明らかになった。利用環境は農耕地(牧草地、耕作地)と林縁・防風林を含む森林だけでなく、都市部の緑地帯や公園にもおよび、都市部についてもかなりの利用が認められた。3. 給餌に持ち帰った餌生物サンプルを蓄積し、空中でどのような餌生物を捕獲しているのかについての解明を進めた。多様な餌を利用していることがわかったが、ケアリ類やクロスズメバチがよく利用されていた。空中での個体数が多い、集中的に分布しているなどの理由が考えられた。どのようにして、そのような集中的に餌生物が発生しているところを発見するかについて、今後、実験アプローチを取り入れて調査を進めることになった。4, 巣箱の設置を継続し、2 年にわたって高い利用率での繁殖誘致に成功した。本種の人工的繁殖場所の提供および生態研究のための環境整備について順調に進捗した。本種は繁殖場所となる大径木の現象に伴い個体数を減らしている。そのような種の保全に役立つ知見を提供することができる見通しが立った。5. 野外調査地で気象調査ドローンを飛ばし、空中の精度高い気象データを計測した。6. 上記の 2, 3, 4 についての現時点での成果をとりまとめ、日本鳥学会 2019 年度大会で発表した。
著者
西藤 清秀
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、紛争、開発、自然災害により消滅した有形文化財(以下文化財)・建造物を3次元画像として再現することである。紛争や自然災害は、多くの重要な文化財や建造物の破壊を招き、また昭和の高度経済成長期の宅地開発や社会インフラ整備は、多くの遺跡を消滅させた。これら対して本研究は、2点に焦点を当て実施する。第1点はISに爆破されたシリア・パルミラ遺跡ベル神殿の3次元画像をもとにした再現、第2点は宅地開発等で消えた古墳群・古墳の過去の写真による3次元的再現である。第1点のベル神殿の3次元画像の再現は、ドイツ考古学研究所の画像の提供により、一昨年より僅かに進展した。第2点の過去の写真を活用しての古墳群・古墳の3次元画像の再現は、住宅開発で消滅した奈良県御所市石光山古墳群、同市西松本古墳群、さらに長年の耕作地利用と学校建設によって墳丘の姿を変えていった明日香村小山田古墳において実施した。これらの古墳群・古墳の3次元的再現には戦後直後、1940年代後半に米軍によって撮影された空中写真を利用した。その結果、石光山古墳群では、一基一基の古墳の位置を明確に確認できた。西松本古墳群では、過去に調査された古墳の位置が報告文だけであったが、今回の画像から調査された古墳の位置を検証することができた。明日香村小山田古墳では、学校建設によって外観的にはほとんど消滅した古墳の墳丘を学校建設前の1948年の姿に甦らせることができた。本研究において過去の画像を現代的に活用し3次元化した結果、消失する前の古墳・古墳群とその周辺地形の新たな姿を再現することができた。今後、古墳群や古墳の歴史的立地環境を考える上で絶好の材料を提供することができ、新たな研究への窓口を開くために大いに貢献できると考えている。
著者
須川 亜紀子 清水 知子 田中 東子 岩下 朋世 川村 覚文
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

平成29年度の研究実績は以下の通りである。1)2.5次元文化に関するアンケート調査をウェブアンケートの形で、日、英、中、韓国語の4ヶ国語で立ち上げた。年度末時点での回収数は、各約100~300件で概ね順調である。平成30年度も引き続き回答数を伸ばすよう国内外で宣伝を行う。2)各メンバーそれぞれ、舞台、イベントなどにおけるファン活動、ファンへのインタビュー調査などを行った。須川・・ファン調査(東京、九州、中国、シンガポール)、田中・・ファンインタビュー(東京)、岩下・・イベント調査(仙台、東京)、清水・・理論研究とファン調査(シンガポール)、川村・・イベント調査(名古屋、シドニー)、理論研究、ファン調査(シンガポール)を行った。3)須川が、「2.5次元文化を考えるシンポジウム」を3名の外部講師を招聘して開催し、コンテンツツーリズム(アニメ聖地巡礼)とAR技術、ファンのイマジネーションについての議論を深めた。各メンバーも参加し、知見を深めた。4)2.5次元文化作品の制作者へのインタビュー調査を行った。須川・・人吉温泉観光協会、アニメ世界名作劇場プロデューサー、アニメ名作劇場に関する書籍の著者など。5)国内外の研究者を外部講師として招聘し、研究会を行った。(平成29年10月シノハラユウキ氏(ポピュラー文化・哲学評論)、平成30年1月国立シンガポール社会科学大学講師ジョエル・グン氏(メディア論、日本文化学))。