著者
中山 祐一 新家 一輝 髙島 遊子 久保田 牧子 中島 るり子 山崎 あけみ
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.393-401, 2016-12-01 (Released:2019-04-01)
参考文献数
18

本研究は特別支援学校卒業前後の重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))と養育者の体験を明らかにすることを目的として、特別支援学校卒業後から5年程度の重症児(者)の養育者15例に半構造化面接を行い、質的帰納的分析を行った。調査期間2015年2月~2015年11月。重症児(者)は19~24歳(男10名、女5名)、養育者は45~61歳(男1名、女13名、両親参加1組の計16名)、面接時間は平均103分であった。卒業前後の体験を表すカテゴリーを7つ抽出した。養育者は重症児(者)に【充実した人生を過ごして欲しいという思い】を抱き【養育者友達との支え合い】の中で養育し続けてきた。重症児(者)は支援学級や特別支援学校に就学し【充実した学校生活】を過ごしていた。卒業後は重症児(者)の体調・卒業後の行先・携わる人によって【重症児(者)の生活の相違】が生じ、社会資源の活用の程度によって【養育者の生活の相違】も見られた。現在、養育者は【子どもの将来を懸念】しながら【子離れに逡巡】し、将来について悩んでいた。
著者
村上 旬平 稲原 美苗 竹中 菜苗 青木 健太 新家 一輝 松川 綾子 有田 憲司 秋山 茂久
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.16-23, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
15

障害者歯科医療現場にはさまざまな「生きづらさ」のある人が来院する.歯科治療や歯科保健を進めるうえで,障害当事者だけでなく親への支援が必要となる場合も多い.本研究では障害者歯科医療での親支援について,障害者歯科学,臨床哲学,臨床心理学および小児看護学による学際的検討を行った.大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部に受診する障害当事者および家族に心理的支援の必要性を問うアンケートを実施しそのニーズを探った.その後障害のある子どもをもつ親を対象とした心理カウンセリングを7名に実施し,哲学対話を18回開催した.心理カウンセリングでは親に来談意欲の高さと,自分自身を語りの中心におく人が多い特徴がみられた.哲学対話では親の日常生活の中での「生きづらさ」が明らかとなり,哲学対話の場で互いの知識や経験などの情報交換が行われた.それによって障害当事者とその親の日常生活での障害者歯科の位置付けが明らかとなり,障害者歯科での対応が,親には安心感として伝わっているということが描き出された.本研究を通じ障害者歯科医療現場での親支援ニーズが存在し,親に「物語る」「語り合う」場所を提供することが,当事者の生活に寄り添えるケアを考え,多職種の支援をつなげ,新しい支援ネットワークの構築に寄与するとともに,当事者からのフィードバックが障害者歯科医療の質的向上に寄与する可能性が示された.