- 著者
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石川 真暉
新家 隆佑
鈴木 学
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2017
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>理学療法士養成校には,教育課程の中に臨床実習(以下実習)が設定されている。これは学生が理学療法士になるためには重要な科目であるが,学生は実習に対して多かれ少なかれ不安を持っていて,それには学生の知識や技術レベル,性格など様々な要因が関係していることが考えられる。実習に対する学生の不安に関する先行研究で,杉戸らは,実習中では,自由な子の方が睡眠時間が長く,ストレスが低い,と報告しているが,個人の性格が実習に対して実習前の不安及び実習中のストレスとの関連しているという報告は極めて少ない。本研究では,個人の性格による実習への不安および実習中のストレスとの関連を明確にし,円滑な臨床実習の一助にすることを目的とした。</p><p></p><p>【方法】対象はA大学の理学療法学科3年の学生69名とした。方法は実習前に性格診断と実習不安に関するアンケート,実習後に実習中のストレス検査を実施した。性格診断の調査は淡路・岡部式向性検査表を用いて,50項目の二者択一で性格を外向性,内向性に分類した。また実習への不安調査は,21項目からなる5段階評価(1=不安~5=安心)で,ストレス検査は,SRS-18(Stress Response Scale=心理的ストレス反応尺度)を用いた。これは18項目の質問からなり,実習中の心理状態を想起し,4段階評価(0=全く違う~3=その通りだ)とし,3タイプのストレス(抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力)を算出し合計得点を総合的ストレス得点とした。統計処理は性格による不安およびストレスとの差異をマンホイットニーのU検定で検討した。また性格毎に不安とストレスとの関係をスピアマンの順位相関分析にて検討した。統計ソフトはSPSSstatistics23を使用し,有意確率は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>アンケート回答者は69名(男性37名,女性32名)であった。内向性と外向性による不安に関しては,有意差はないが,ストレスでは外向性の方が有意に高かった(p<0.05)。外向性の性格では不安はストレスとの間には「総合的ストレス」(ρ=0.995)であった。内向性の性格でも不安とストレスとの間には「総合的ストレス」(ρ=0.979)であった。不安は3タイプのストレス反応および総合的ストレスとの間には有意な強い正の相関が見られた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>性格による不安の程度に差はないが,ストレスは外向性の性格の方が高かった。不安とストレスの関連では,不安の程度とストレスの程度は反比例することが示唆された。不安が強いことで,実習に対する学習意識が強くなり,実習中のストレスが低くなると考える。また,不安が低いことで実習に対する準備不足になる可能性があり,実習の遂行に支障をきたしストレスの増強に繋がると考えられる。今後不安が少ない学生に対しても,適度な緊張感を与えることが必要であると考える。</p>