著者
渡部 茂 大西 峰子 河野 英司 新川 斉 五十嵐 清治
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-63, 1990-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
34

小児の唾液クリアランス能に関与している唾液分泌量について,生理学的な背景を得るために,5歳児,男女各20名の安静時唾液分泌量と,クエン酸刺激による最大唾液分泌量を測定した.クエン酸は1%(52mmol/l),3%(156mmol/l),5%(260mmol/l)溶液を用い,直径2.5mmのチューブにて,流速5ml/minで1分間口腔内を刺激し分泌された唾液量を測定した.安静時分泌量は首をやや前傾させ,口を軽く開け,舌,口唇を動かすことを禁じたまま5分間採取し,1分間の分泌量を求めた.その結果,平均の安静時唾液分泌量は,0.24±0.13ml/minで,1%クエン酸による分泌量は2.34±1.11ml/min,3%クエン酸では3.18±1.03ml/min,5%クエン酸では4.25±1.38ml/minであった.これら全ての値に男女間の有意差は認められなかった.5%クエン酸による分泌量を100%とした場合,安静時唾液分泌量は約5%,1%クエン酸による分泌量は約57%,3%では約80%を示していた.これは同様の実験で得られたBecksら,Watanabeらの成人の値と比較すると,ほぼ等しい割合を示していた.また,安静時唾液分泌量は成人の分泌量の約75%,各クエン酸溶液による分泌量は成人の約50~60%の範囲にあった.今回の結果は乳歯列での唾液クリアランス能を成人と比較して考えるうえで重要な示唆を与えるものと思われた.