著者
渡部 茂 大西 峰子 今井 香 河野 英司 浅香 めぐみ 五十嵐 清治
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.81-85, 1993-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
16

小児の食物咀嚼に唾液がどの様に関与しているかを知るために,食物咀嚼時間,および食物咀嚼によって分泌される唾液量について検討を行った.使用した食物はクッキー,タクアン,ソーセージ,マッシュポテト,リンゴ,ライスの6種である.5歳児で健全乳歯列を持つ男女各10人に対し実験を行った.唾液分泌量は,食物を通常通り咀嚼させ,嚥下の時期がきたら嚥下させず,あらかじめ計量してあるビーカーに吐き出させ,この重量から始めの食物の重量を差し引くことによって求めた(Chewing spit法).その結果,食物10gに対する平均の咀嚼時間はクッキーが最も長く(124.2±100.6秒),最も短いのはライス(32.6±19.9秒)であった.この10g咀嚼時間は始めの食物の水分量との間に負の相関がみられた(γ=-0.85,P<0.05).これは小児の食物咀嚼時間に食物の水分量が何らかの影響を与えていることを示唆するものと思われた.唾液分泌量に男女差はみられなかった.6種類の食物による平均唾液分泌量は3.6±2.7ml/minであった(クッキーが最も多く,ライスが最も少なかった).しかし食塊を吐き出した後,口腔内に食渣として残った食物量の平均値は13.7±6.4%であったので,今回得られた唾液分泌量の値は実際より若干下回るものと思われた.
著者
日本小児歯科学会 有田 憲司 阿部 洋子 仲野 和彦 齊藤 正人 島村 和宏 大須賀 直人 清水 武彦 石通 宏行 松村 誠士 尾崎 正雄 石谷 徳人 濱田 義彦 渥美 信子 小平 裕恵 高風 亜由美 長谷川 大子 林 文子 藤岡 万里 茂木 瑞穂 八若 保孝 田中 光郎 福本 敏 早﨑 治明 関本 恒夫 渡部 茂 新谷 誠康 井上 美津子 白川 哲夫 宮新 美智世 苅部 洋行 朝田 芳信 木本 茂成 福田 理 飯沼 光生 仲野 道代 香西 克之 岩本 勉 野中 和明 牧 憲司 藤原 卓 山﨑 要一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.45-53, 2019-02-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
18

日本人乳歯の萌出時期および萌出順序を明らかにし,乳歯の萌出に変化が生じているか否かを検討する目的で,全国的に3 か月から3 歳11 か月の小児8,724 名を調査し,以下の結果を得た。1 .男児の乳歯萌出は,A が5 か月-9 か月,A が7 か月-11 か月,B が9 か月-1 歳2 か月,B が9 か月-1 歳3 か月,D が1 歳1 か月-1 歳6 か月,D が1 歳1 か月-1 歳7 か月,C が1 歳2 か月-1 歳8 か月,C が1 歳2 か月-1 歳9 か月,E が1 歳11 か月-2 歳7 か月,E が2 歳0 か月-2 歳11 か月の順だったが,BB 間とD, D, C およびC の間には有意な差は認められなかった。2 .女児の乳歯萌出は,A が6 か月-9 か月,A が7 か月-11 か月,B が9 か月-1 歳1 か月,B が9 か月-1 歳2 か月,D が1 歳1 か月-1 歳7 か月,D が1 歳1 か月-1 歳7 か月,C が1 歳3 か月-1 歳9 か月,C が1 歳4 か月-1 歳9 か月,E が1 歳11 か月-2 歳7 か月,E が2 歳1 か月-2 歳10 か月の順だったが,AA 間,AB 間,BB 間,DD 間,CC 間には有意な差は認められなかった。3 .性差は大部分の歯で認めず,C とC の萌出時期にのみ有意な差を認め,いずれも男児が1 か月早く萌出していた。4 .前回報告(1988 年)に比べて,男児はA, A, C, D の,女児はA とD の,萌出時期が有意に早くなっていることを認めた。
著者
渡部 茂 大西 峰子 河野 英司 新川 斉 五十嵐 清治
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-63, 1990-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
34

小児の唾液クリアランス能に関与している唾液分泌量について,生理学的な背景を得るために,5歳児,男女各20名の安静時唾液分泌量と,クエン酸刺激による最大唾液分泌量を測定した.クエン酸は1%(52mmol/l),3%(156mmol/l),5%(260mmol/l)溶液を用い,直径2.5mmのチューブにて,流速5ml/minで1分間口腔内を刺激し分泌された唾液量を測定した.安静時分泌量は首をやや前傾させ,口を軽く開け,舌,口唇を動かすことを禁じたまま5分間採取し,1分間の分泌量を求めた.その結果,平均の安静時唾液分泌量は,0.24±0.13ml/minで,1%クエン酸による分泌量は2.34±1.11ml/min,3%クエン酸では3.18±1.03ml/min,5%クエン酸では4.25±1.38ml/minであった.これら全ての値に男女間の有意差は認められなかった.5%クエン酸による分泌量を100%とした場合,安静時唾液分泌量は約5%,1%クエン酸による分泌量は約57%,3%では約80%を示していた.これは同様の実験で得られたBecksら,Watanabeらの成人の値と比較すると,ほぼ等しい割合を示していた.また,安静時唾液分泌量は成人の分泌量の約75%,各クエン酸溶液による分泌量は成人の約50~60%の範囲にあった.今回の結果は乳歯列での唾液クリアランス能を成人と比較して考えるうえで重要な示唆を与えるものと思われた.
著者
日本小児歯科学会 有田 憲司 阿部 洋子 仲野 和彦 齊藤 正人 島村 和宏 大須賀 直人 清水 武彦 尾崎 正雄 石通 宏行 松村 誠士 石谷 徳人 濱田 義彦 渥美 信子 小平 裕恵 高風 亜由美 長谷川 大子 林 文子 藤岡 万里 茂木 瑞穂 八若 保孝 田中 光郎 福本 敏 早﨑 治明 関本 恒夫 渡部 茂 新谷 誠康 井上 美津子 白川 哲夫 宮新 美智世 苅部 洋行 朝田 芳信 木本 茂成 福田 理 飯沼 光生 仲野 道代 香西 克之 岩本 勉 野中 和明 牧 憲司 藤原 卓 山﨑 要一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.363-373, 2019-06-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
17

要旨:日本人永久歯の萌出時期,萌出順序および第一大臼歯と中切歯の萌出パターンを明らかにし,約30 年前と比べて永久歯の萌出に変化があるか否かを検討する目的で,4 歳0 か月から18 歳11 か月の小児30,825 人を調査し,以下の結果を得た。1 .男子の萌出は,1 が5 歳6 か月-7 歳0 か月,6 が5 歳10 か月-7 歳6 か月,1 が6 歳6 か月-7 歳10 か月,2 が6 歳3 か月-8 歳3 か月,6 が5 歳11 か月-8 歳7 か月,2 が7 歳6 か月-9 歳2 か月,3 が9 歳2 か月-11 歳3 か月,4 が9 歳1 か月-11 歳7 か月,4 が9 歳5 か月-11 歳6 か月,3 が9 歳10 か月-12 歳1 か月,5 が10 歳4 か月-13 歳0 か月,5 が10 歳3 か月-13 歳2 か月,7 が11 歳3 か月-13 歳 10 か月,7 が12 歳1 か月-14 歳5 か月の順であった。2 .女子の萌出は,1 が5 歳5 か月-6 歳7 か月,6 が5 歳6 か月-7 歳0 か月,1 が6 歳3 か月-7 歳7 か月,2 が6 歳3 か月-7 歳8 か月,6 が5 歳10 か月-8 歳4 か月,2 が7 歳2 か月-8 歳8 か月,3 が8 歳 8 か月-10 歳5 か月,4 が8 歳11 か月-11 歳0 か月,4 が9 歳1 か月-11 歳1 か月,3 が9 歳2 か月- 11 歳4 か月,5 が10 歳1 か月-12 歳11 か月,5 が10 歳2 か月-13 歳1 か月,7 が11 歳2 か月-13 歳 10 か月,7 が11 歳9 か月-14 歳3 か月の順であった。3 .萌出順序は,男女ともに上顎が6≒1 →2 →4 →3 →5 →7 で,下顎が1 →6 →2 →3 →4 →5 → 7 であった。4 .第一大臼歯と中切歯の萌出パターンは,男子では上顎がM 型77.2%,I 型22.8%で,下顎がM 型29.2%,I 型70.8%であった。女子では上顎がM 型73.4%,I 型26.6%で,下顎がM 型36.7%,I 型63.3%であった。5 .萌出時期の性差は,すべての歯種で女子が早く萌出しており,上下顎1, 2, 3, 4 および6 に有意差が認められた。6.約30 年前に比べて,男子は上下顎4, 5, 6 が,女子は3,上下顎の4, 5, 6, 7 の萌出時期が有意に遅くなっていた。
著者
鈴木 昭 吉田 美香子 八木 茜 岩下 あいり 山田 亜由子 中村 朋美 渡部 茂
出版者
日本小児口腔外科学会
雑誌
小児口腔外科 (ISSN:09175261)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.177-181, 2010-12-25 (Released:2014-07-18)
参考文献数
19

We report the case of an eight-year-old girl who had dysplasia of the teeth, suspected to be induced by chemotherapy. The patient was born at full term by normal delivery, and was diagnosed to have neuroblastoma (stage IV-S) by ultrasonography. Tumor resection was performed 15 days after birth, and chemotherapy was performed for 12 months after that. She has had a good prognosis since then.   The examination of the oral cavity revealed morphological abnormalities of the crowns of the right and left upper central incisors. X-ray showed findings of morphological abnormalities of the four central incisors and deficiencies in tooth germs of the right and left lower lateral incisors.   The dysplasia of the teeth in this patient was considered to be caused by chemotherapy, because the period of chemotherapy doses coincided with the formation period of those teeth.
著者
加藤 一夫 渡部 茂己 小田部 雄次
出版者
静岡精華短期大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

最終年の今年度は、これまでの資料調査と研究をふまえて、各自それぞれ以下のような研究成果を発表した。加藤は、これまでの資料調査に基づいて「地域民族紛争と国連平和維持活動-カンボジア問題を中心に」(『静岡精華短期大学紀要 第3号)を研究論文として発表した。小田部も同様に、これまでの資料調査から「『カンボジア・タイムズ』に見る自衛隊撤収後のカンボジア」(『静岡精華短期大学紀要 第3号)を研究論文として発表した。渡部は、国連・PKOの資料分析から単著『国際機構の機能と組織-新しい世界秩序を構築するために』(国際書院)を出版、また「『国際社会の民主化』に関する一考察」(『静岡精華短期大学紀要 第3号)を研究論文として発表した。以上により、本研究は一定の成果を達成した。
著者
諏訪 正義 渡部 茂 菅川 勝次 小川 勝美
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.34, pp.104-106, 1983

常温倉庫内に保管した着色米混入玄米の, 保管中における着色程度の進行の有無および着色米関与菌の動向について検討し次のことが明らかとなった。(1) 着色米は, 紅変米, 背黒米, 茶米の3種類に類別された。これらの混入率は保管中に変化しなかった。(2) 玄米の白度も保管中に変化せず, 着色程度の進行は認められなかった。(3) 着色米からは<I>E.purprascens, Alternaria</I> spp., <I>Fusarium</I> spp.が分離され, 特に前者が高率に分離された。(4) これら関与菌は保管中に経時的に死滅した。また接触感染しなかった。
著者
八幡 祥子/河野 英司/広瀬 弥奈/浅香 めぐみ/松本 大輔/坂口 也子/丹下 貴司/時安 喜彦/渡部 茂/五十嵐 清治/広瀬 公治/三浦 宏子/水谷 博幸/上田 五男 ヤハタ ショウコ/カワノ エイジ/ヒロセ ミナ/アサカ メグミ/マツモト ダイスケ/サカグチ ナリコ/タンゲ タカシ/トキヤス ヨシヒコ/ワタナベ シゲル/イガラシ セイジ/ヒロセ コウジ/ミウラ ヒロコ/ミズガイ ヒロユキ/ウエダ イツオ YAHATA Syouko/KAWANO Eiji/HIROSE Mina/ASAKA Megumi/MATSUMOTO Daisuke/SAKAGUCHI Nariko/TANGE Takashi/TOKIYASU Yoshihiko/WATANABE Shigeru/IGARASHI Seiji/HIROSE Kouji/MIURA Hiroko/MIZUGAI Hiroyuki/UEDA Itsuo
雑誌
東日本歯学雑誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.207-212, 1995-12-31

The collective dental examinations of nursery school children aged 3 to 5 in Shinshinotsu village in Hokkaido have been conducted for several years by our departments in cooperation with the administrative organs of Shinshinotsu village. The data of dental examinations in 1994 were analyzed and compared with the data for 1988 as well as with the data of the Survey of Dental Diseases by the Health Policy Bureau Ministry of Health and Welfare, Japan in 1993 and 1987. The results were as follows; (1) The rate of persons with carious teeth and the mean number of carious teeth per person in Shinshinotsu village were higher than those of the National Survey by the Ministry of Health and Welfare at all ages. (2) The rate of persons with carious teeth and the mean number of carious teeth per person decreased. The rate of persons with dental treatment increased from 1988 to 1994 in 4 year-old children in Shinshinotsu village in the same manner as the results of the National Survey by the Ministry of Health and Welfare, while dental caries showed no decrease in the 3 and 5 year-old children.
著者
新居 智恵 田中 庄二 鈴木 昭 村上 幸生 小林 聡子 秋田 紗世子 利根川 茜 渡部 茂 町野 守
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.628-633, 2009-09-25 (Released:2015-03-11)
参考文献数
30

切歯結節は,切歯の基底結節が隆起した比較的稀な歯科的な異常である。われわれは,永久前歯における切歯結節の6 例を経験した。3 例は,上顎側切歯に,1 例は両側の上顎中切歯にみられた。1 例は,稀な下顎に,さらに,1 例は下顎側切歯と下顎犬歯の癒合歯にみられた。 結節の形態は,凸様突起物はたはT 字状突起物であった。処置は,レジン充塡にて結節の補強を行い経過観察とした。咬合に関係していない症例では経過観察とした。 永久前歯における切歯結節について,文献的考察を加えて報告した。
著者
井上 美津子 浅里 仁 池田 訓子 小林 聡美 佐々 龍二 高木 裕三 朝田 芳信 大嶋 隆 小口 春久 田中 光郎 前田 隆秀 宮沢 裕夫 藥師寺 仁 渡部 茂 真柳 秀昭 鈴木 康生 下岡 正八 野田 忠 渋井 尚武 進士 久明 田村 康夫 土屋 友幸 大東 道治 香西 克之 西野 瑞穂 木村 光孝 本川 渉 藤原 卓 山崎 要一 吉田 昊哲 丸山 進一郎 嘉ノ海 龍三 品川 光春
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.561-570, 2005-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

小児に対する歯科用局所麻酔剤の安全性を明らかにするため日本小児歯科学会の委嘱により,臨床における使用実態と不快事項の発現に関する調査を行った.大学病院小児歯科および個人小児歯科診療所より4,145名分のデータが収集され,以下の結果を得た.<BR>1.局所麻酔を用いた治療は0歳から20歳以上の幅広い年齢層に行われていたが,12歳以下の者が約90%を占めていた.<BR>2.全身疾患やアレルギー体質を有する小児は調査対象児の2割以上を占め,また局所麻酔が初めての小児が16.2%であった.3<BR>.小児の治療において,局所麻酔はコンポジットレジン修復などの修復処置にも多用されていた.<BR>4.局所麻酔薬剤としてはリドカイン製剤が多く用いられており,投与量は1.0ml以下が多かったが,1.8mlを超えた例も3%程度みられ,追加投与により総量が増える傾向がみられた.<BR>5.術中,術後の不快事項は,それぞれ108名(2.6%),109名(2.6%)にみられた.不快事項の内容は,麻酔の奏効不良による疼痛や麻痺による違和感・不快感の訴えや,麻痺の残存による咬傷などが多くを占めていた.<BR>6.局所麻酔薬剤の副作用を疑わせる熟睡や軽い呼吸困難,悪心などの症状は,術中に3例,術後に6例ほどみられたが,いずれも重篤なものではなかった.