著者
福井 博泰 新庄 エルサ-マルガリータ 梁川 良
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.177-186, 1980-04-25

レプトスピラの抗原変異株を家畜から分離しようとして, Leptospira interrogans血清型canicolaを子犬に, pomonaをSPF豚に接種し, 血液および腎臓をhomologousな免疫血清を加えた寒天平板に培養した. 2〜4週後に寒天上に発育したコロニーを, 大, 中および小型コロニーに区分し, それぞれいくつかずつを無作為に単離し, 沈降素吸収試験によるスクリーニングでその抗原性を親株と比較した. Canicolaの抗原変異株は感染犬10頭中7頭の血液および7頭中3頭の腎臓から得られた. 変異株は血液および腎臓由来の大型コロニーに多数, また血液由来の中および小型コロニーに少数認められた. 変異株は接種菌液からも分離されたが, 感染犬血液からはそれよりも有意に高い割合で分離された。他方pomonaの抗原変異株は感染豚5頭中2頭の血液のみにおいて小型コロニーに認められた. 大型コロニーは豚からは出現しなかった. 変異株は接種菌液からも分離されたが感染豚血液からはそれより有意に高い割合で分離された. 変異株の抗原性は交差凝集素吸収試験などによっても親株とは明らかに異なり, 同じ株由来の変異株はその抗原性が互いに類似した. 以上の結果は, 用いられた株には少数の抗原変異株が含まれており, その割合は実験感染後3〜7日目の犬や豚の血液において有意に上昇したことを示している.