著者
新庄 雅斗
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

近年,可積分系理論の数値計算への応用が見出され,可積分な離散戸田方程式と数学的に等価なquotient-differenceアルゴリズムは3重対角行列の固有値計算アルゴリズムとして国際標準となっている.最終年度は,離散戸田方程式の拡張と見なせる離散ハングリー戸田方程式及びその非自励版に対して,一般解の構造や関連する固有値問題を明らかにし,正値性が崩れる場合でも,解の一部が離散時間極限において帯行列の固有値に収束することを示した.これは可積分系由来の固有値計算アルゴリズムの広範な実用化には欠かせない進展である.これらの成果については,国際会議発表を経て, 離散ハングリー戸田方程式については平成29年5月にEast Asian Journal on Applied Mathematics誌に,非自励版については平成30年1月にJournal of integrable Systems誌においてそれぞれ採録された.また,非自励な離散ハングリー戸田方程式に現れるシフトパラメータの連続極限で得られる力学系が,帯行列に関するラックス表示をもつことを明らかにした.これは離散可積分系由来の固有値計算アルゴリズムの背景には,保存量をもつラックス型力学系が存在することを意味しており,ラックス表示の観点から新しい固有値計算アルゴリズムへの応用が期待される.この結果は現在,学会発表を経て,海外の専門誌に投稿中である.