著者
中澤 隆雄 今井 富士夫 新西 成男
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ポーラスコンクリートは,その特徴である多孔性によって種々の優れた特性を有している。吸音機能もその1つであり,近年では吸音機能に関する研究も次第に活発に行われてきており,本研究では,これまで道路交通騒音の低減が可能なポーラスコンクリートの開発を目的の1つとして,インピーダンス管による垂直入射吸音率のデータの収集や吸音壁の等価騒音レベル低減効果に関して,実験的な研究を行ってきている。ポーラスコンクリート壁を作製するにあたって用いた火山性軽量骨材のぼら,石灰石およびフェロニッケルスラグ(以下,FNSと記述)の3種類の骨材ならびに2種類の目標空隙率20%と30%が騒音低減効果に及ぼす影響を検討した。騒音低減効果の検討にあたっては,普通騒音計を用いて得られた100〜2000Hzの範囲の各1/3オクターブバンドの周波数の等価騒音レベルを用いている。また,壁供試体から抜き取った直径約100mmのコアに対して,インピーダンス管による垂直入射吸音率も測定し,吸音壁から得られた等価騒音レベルとの関連についても検討を加えている。得られた結果を要約すると以下のとおりである。(1)使用骨材別にみると,FNSを用いた壁の騒音低減効果が最も高くなった。これは粒径が他の骨材よりも小さいために空隙径が小さくなり,実際の空隙率も他の骨材の場合より低めになった影響と思われる。(2)FNSを用いた場合,特に1000HZ以上の周波数に対して,回折行路差の影響を上回る騒音低減が生じていることからも,FNSの吸音効果が高いといえる。(3)ぼらおよび石灰石を用いた壁の騒音低減効果がFNSほど大きくないのは,これらの壁の内部空隙を音が透過する影響によるものと考えられる。(4)ぼらおよび石灰石を用いた場合の垂直入射吸音率は,500Hz近傍で第1の吸音ピークが生じているが,この周波数域での壁の等価騒音レベルの低減量がそれほど大きくないことからも,壁内部の空隙を音が透過する影響があると考えられる。(5)同一骨材を使用した壁の空隙率の影響をみると,空隙率が小さい方が等価騒音レベルの減量は幾分大きくなる傾向が認められた。