著者
宍戸 良洋 尹 千鍾 湯橋 勤 施山 紀男 今田 成雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.771-779, 1991
被引用文献数
4 9

トマトにおける葉の光合成速度および転流•分配の経時的変化と葉の物質生産に対する寄与度について検討するため<sup>14</sup>CO<sub>2</sub>を用いて実験を行った.<br>1). 第3葉と第7葉 (花房直下葉) の光合成速度は若い葉で高く, 発育するに従って低下した. しかしながら, 1葉当たりの光合成量は葉面積の増加度の高い間は増加し, 葉面積の増加が鈍化すると減少し, 葉の完全展開直前に最大になった.<br>2). 各葉の基本的なソース•シンク関係はその葉の近くの非光合成器官 (根や果実) をメインのシンクとし, 作物の生育ステージごとに, シンク間の発育程度の違いによるシンク間の競合と位置関係によって光合成産物の分配パターンは決定されることが示唆された.<br>3). 全葉の全光合成量からシンクにおける物質生産に対する各葉の寄与度を計算し, 果実では2~4枚の葉で果実の物質生産の60~80%を賄っていることならびに1枚の葉の最大限の寄与度は30%前後であるものと推定した.<br>4). 葉はその葉齢や個体のステージによってその光合成能および各シンクに対する寄与度を変化させていくこと, その変化の最大の要因は果実の肥大量および速度とみられ, そのシンクのメインのソース葉の光合成量と転流率のピークもそのシンクの旺盛な生長時に一致するものと考えれる.