著者
日下部 尚徳
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
no.15, pp.57-60, 2015-02-24

本研究の目的は、大型の熱帯低気圧(サイクロン)による被害が甚大なバングラデシュ南部沿岸地域において、地域の災害脆弱性と貧困課題の関連性を明らかにすることにある。調査対象地域は、サイクロンの上陸頻度が高く、過去に甚大な人的被害が発生しているノアカリ県ノアカリ郡ハティア島とし、同地において貧困層を対象とした質問紙調査を実施した。調査は、現地行政機関において対象地域の世帯リストを保有していないことが明らかとなったため、リストを作成した上で355世帯を訪れ、ベンガル語を用いた訪問面接法によっておこなった。これらの調査から、2007年のサイクロンの際に避難警報に従って事前にシェルターに避難したのは全体の12%に過ぎないことが明らかになった。避難しない要因としては、米や豆などの食糧や仕事道具などの家財の散逸や盗難の心配、資産的価値の高い牛やヤギなどの家畜被害に対する不安、人づてで伝えられる警報への不信、などが影響していることが明らかとなった。
著者
日下部 尚徳
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.53-68, 2011

バングラデシュ政府は、2010年5月までに、国内14ヵ所のコミュニティラジオ局に放送認可を与えた。これまで、コミュニティラジオは開発分野における応用可能性が認識されていながらも、自らの監視下にないラジオ放送の政治利用を恐れる政府は、導入に消極的であった。本論ではまず、バングラデシュ政府がコミュニティラジオ局に放送認可を与えるに至った要因を文献レビューから明らかにした。具体的には、(1)現政権による投資・産業政策の推進をも視野にいれた積極的な情報戦略の中に、コミュニティラジオが位置づけられたこと、(2)NGOがロビー活動によって、開発政策のツールとしてコミュニティラジオが有用であることを政府に認識させたこと、が挙げられる。加えて本論では、バングラデシュ国ノアカリ県ハティア島でおこなった、住民の情報ソースへのアクセスに関する量的調査をもとに、ラジオが情報伝達手段として有効であることを示した。その上で、同様の調査で明らかになった、コミュニティラジオに対する住民のニーズを分析し、コミュニティラジオの地域開発への応用可能性について論じた。
著者
日下部 尚徳
出版者
上智大学アジア文化研究所
雑誌
上智アジア学 (ISSN:02891417)
巻号頁・発行日
no.29, pp.137-153, 2011

<特集>21世紀の南アジア(South Asia of the Twenty-first Century)