著者
日野 明子 広瀬 隆則 山田 順子 高井 チカ子 山口 美紀 佐野 寿昭
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.93-97, 1999-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

鼻腔内腫瘍として発症した浸潤性下垂体腺腫を経験したので細胞所見とともに報告する. 症例は64歳, 女性. 右鼻閉感と鼻出血が出現し, 耳鼻科にて鼻腔内腫瘍を指摘された. 頭部MRIで腫瘍は蝶形骨洞を主座とし, 眼窩, 上顎洞, 筋骨洞, 鼻腔への進展が認められた. トルコ鞍は腫瘍で置換されていた. 鼻腔からの生検で神経内分泌腫瘍と診断され, 当院脳神経外科にて経蝶形骨腫瘍摘出術が行われた. 捺印細胞像では腫瘍細胞は均一で平面的に配列していた. 細胞質は豊富でライトグリーンに淡染し, 核は円形でクロマチンは細顆粒状に増量していた. 組織像では充実性もしくは索状に配列し, perivascular pseudorosetteやmicrocystがみられた. 免疫組織化学にてcytoker-atin, chromogranin A, synaptophysinが陽性で, 下垂体前葉ホルモンは陰性であった. 電顕的には神経内分泌顆粒が認められた. 以上から下垂体腺腫null cell typeと診断した. 本腫瘍は頭蓋内の良性腫瘍だが, 時に周囲の骨を破壊して眼窩や鼻腔などの頭蓋外へ進展することがあり, 悪性腫瘍と誤認しないことが大切である.
著者
広瀬 隆則 山田 順子 山本 洋介 佐野 暢哉 日野 明子 古本 博孝 山田 正代 佐野 壽昭
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.233-237, 1997-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
4 4

子宮頸部にはまれに神経内分泌癌が発生することが知られている. 30歳, 妊娠29週の女性の子宮頸部に発生した小細胞性神経内分泌癌の1例を経験したので, 細胞所見を中心に報告した. 患者は不正性器出血を主訴として来院し, 頸部前唇にピンポン玉大の腫瘍が見出されたため, 広範子宮全摘出手術が行われた. 術後, 大量化学療法と末梢血幹細胞移植が施行されたが, 合併症のため約7ヵ月後に死亡した. 擦過細胞診では, 小型で裸核状の腫瘍細胞が壊死物質を背景に孤立散在性ないし結合性の弱い小集塊として認められ, 肺小細胞癌の細胞所見に類似していた. 組織学的に腫瘍細胞は, 胞巣状, 索状ないしリボン状に配列し, 多くの細胞でGrimelius法により好銀顆粒が証明された. 免疫組織化学的に, Chromogranin A, neuron specific enolase, synaptophysinなどの神経性マーカーが陽性を呈しており, 小細胞性神経内分泌癌と診断された. 本腫瘍は, 小細胞性扁平上皮癌や低分化腺癌との鑑別が難しいが, これらの腫瘍より進行が早く悪性度が高いので, 早期に診断し強力な治療を開始することが大切である. 診断上, 細胞診のはたす役割は大きいと考えられた.