- 著者
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中井 秀樹
堀江 直人
矢越 智幸
日高 憲司
堀 竜次
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
- 雑誌
- 近畿理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2009, pp.79, 2009
【はじめに】臨床において、誤嚥性肺炎の繰り返しから離床機会が遅延してしまう症例を経験する。今回、離床を進めていく上で他職種との共通理解を深め、得られた情報から問題点を列挙し再考察を行い、適切なポジショニングや呼吸管理方法を統一して行なうことで、肺炎症状を予防し、離床頻度を増やすことが出来た症例を経験したので報告する。【症例紹介】64歳女性。右中大脳動脈の動脈瘤破裂によるくも膜下出血・右脳内出血・脳室内穿破を認め、同日開頭血腫除去術・クリッピング施行。発症後2日目、緊急外減圧手術(右頭蓋骨除去、右脳室ドレナージ)発症後2ヶ月目、シャント術施行。活動レベルは全介助の寝たきり状態であり、ベッド臥床時適切なポジショニングが十分に行われていなかったことで頸部・骨盤のアライメント不良を呈し、努力呼吸が見られ唾液の誤嚥による肺炎症状を繰り返すといった悪循環に陥っていた。尚、本症例の発表について御家族に趣旨を説明し同意を得た。【方法】他職種(看護師、介護士)と打ち合わせを行い、開始から4日間は吸引や体位変換施行時に誤嚥の評価項目として吸引の回数・部位、体位、痰の粘性・色について毎日記録を行ってもらい、5日目以降は適切なポジショニング方法(主に頸部・骨盤アライメント)、体位変換時の誤嚥による注意点と吸引前に口腔内の観察、カフ上部の評価、頸部アライメント、聴診にて確認するという計画をたてて実施してもらうこととした。炎症所見として、CRP値については検査毎に変化を追った。呼吸状態の評価項目としては、覚醒、経皮的酸素飽和度、呼吸数、パターン、呼吸音、チアノーゼの有無を確認した。その後治療効果の判定、問題点の確認、アプローチの定期的な再検討を行い、1時間毎の訪床時に吸引実施の評価項目を追加していった。治療的介入として初日より、呼吸介助、排痰療法の他に姿勢筋緊張の調整とギャッチアップ座位練習を中心に実施した。【結果】平均吸引回数は介入初月19.5回±3.1回、1ヵ月後、10.6回±3回、2ヶ月後、13.7回±3.2回であり吸引回数の減少を認めた。CRPの変化においては介入前2.44±2.39と変動が大きく、その後5週平均は1.32±0.27と低値を維持出来た。覚醒状態としては、介入前GCS E3 V1 M3、介入後E4 V1 M4と覚醒レベルの向上もあった。経皮的酸素飽和度については、介入当初より96%で経過し、数値上での変化は見られなかった。呼吸数では、介入前平均回数24.25±1.26回、介入後20.75±1.26回となり減少を認めた。呼吸パターンとして介入後abdominal paradox patternが消失し、呼吸音でも著明な複雑音の消失、チアノーゼも認められなかった。【まとめ】理学療法単独での訓練では十分な効果が認められない症例でも、他職種と連携した評価を進め、定期的に評価項目やアプローチの再検討を行い、共通理解を深めていくことで誤嚥による肺炎症状の予防に繋がった。今後も先行的に他職種と協力し早期離床に繋げていきたい。