- 著者
-
早川 佐知子
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策 (ISSN:18831850)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.2, pp.97-108, 2019-11-30 (Released:2021-12-02)
- 参考文献数
- 23
本論文では,アメリカの人材派遣業の通史をもとに,専門職派遣業,とりわけ,看護師の人材派遣業の特殊性と,それらが成長した背景を分析する。このことで,たとえ非正規雇用であっても生計を維持することができ,かつ,自らのキャリア形成においてもプラスにしてゆけるような働き方の可能性を検討したい。現在,日本の派遣労働者の平均時給はわずか1363円であり,正規雇用労働者との格差が著しい。同一価値労働同一賃金原則に基づき,雇用形態による格差を縮める方向へ動きつつある今,派遣労働の意義も見直すべき時に来ていると考える。
職務の内容ではなく,雇用形態で大きな処遇の格差が生まれる日本の制度の中にあっては,生計のために正規雇用を選択し,結果として長時間労働や遠方への転勤を甘受せざるを得ない労働者も多いであろう。だが,本来であれば,本人が「どのような雇用形態で働くことができるか」ということよりも,「どのような職務を行うのか」ということが優先されるべきである。自らが望む職務を積極的に自己決定できる社会を創るためには,雇用形態がハンディにならないようなシステムが必要になるであろう。