著者
大橋 忠将 有山 ゆり 早川 惠理 長沢 美樹 杉山 徹
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.407-413, 2016

49歳男性.鍼治療後14日で僧帽筋膿瘍,DKA(血糖値643 mg/dL,pH 6.916,総ケトン体20600 <i>μ</i>mol/L)を生じ,意識障害で当院に救急搬送となった.抗菌薬投与,デブリードマン,局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)にて膿瘍の治療を行い,糖尿病に関しては強化インスリン療法で血糖管理した.感染及び血糖値改善後は基礎インスリン投与と経口血糖降下薬の併用療法(basal-supported oral therapy:BOT)に変更して血糖管理を継続した.もともと無治療の糖尿病(HbA1c 15.1 %)による易感染性があり,鍼治療を契機にして僧帽筋膿瘍,感染に伴うDKAを生じたと考えられた.管理不良の糖尿病の存在下では,鍼治療のような侵襲的医療行為により感染症が引き起こされる危険性があり,注意が必要である.