著者
藤野 智史 別府 匡貴 村上 聡 早川 磨紀男
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-178, 2017 (Released:2018-03-29)

<背景> 細胞の脱分化・初期化は、老化した細胞や酸化的障害をうけた細胞を“正常化”する手段として期待される。我々は以前、胆汁酸をリガンドとする核内受容体 farnesoid x receptor (FXR) が分化を制御する転写因子 hepatocyte nuclear factor-4 alpha の発現を促進することを見出した。このことはFXRの制御は細胞の脱分化や初期化につながる可能性を示しており、老化細胞、障害細胞の“正常化”の観点から、詳細な検討が必要である。<結果> ヒト近位尿細管細胞HK-2をFXRの合成リガンドGW4064で処理し、細胞初期化マーカーOct3/4の発現レベルを調べた。その結果、Oct3/4レベルはGW4064により顕著に低下した。一方、コレステロール代謝制御においてFXRと共役する核内受容体である liver x receptor の合成リガンドGW3965でHK-2細胞を処理したところ、FXR リガンド処理時と同様に Oct3/4レベルは顕著に低下した。<考察> これらのことから、FXRとLXRはヒト近位尿細管細胞HK-2 の分化に関与する可能性がある。今後、両核内受容体の活性を負に制御した際に細胞の初期化がみられるかどうか検討を行う必要がある。また、両核内受容体による分化制御機構や共役の有無についても解明が待たれる。