著者
中村 明浩 後藤 淳 星 信夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.631-635, 2008-07-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2

症例は39歳,男性で突然の前胸部痛を訴え来院した.心電図上I,aVL,V2~6誘導でのST低下とCKの上昇を認め,急性冠症候群の診断で緊急入院した.心臓カテーテル検査では冠動脈に閉塞所見や有意な狭窄病変および血栓像は認められず,左室造影でも収縮能は良好に保持され局所壁運動異常も認めなかった.アセチルコリンなどの薬物負荷試験は施行しなかったが,検査時には心電図でST変化は回復していたことから冠攣縮性狭心症とそれに起因した心筋障害と考えられた.入院直後より硝酸薬の持続点滴を行ったが,ST上昇あるいは低下を伴う狭心症発作が頻発したため,塩酸べニジピンと塩酸ジルチアゼムの併用を試みた.しかし,狭心症発作はコントロールできず,Rhokinase阻害薬(塩酸ファスジル)90mg/日点滴投与を開始したところ狭心症発作は消失した.本症例は硝酸薬,Ca拮抗薬に抵抗性を認め,Rho-kinase阻害薬が有用であった難治性冠攣縮性狭心症であり,冠攣縮の活動亢進にRho/Rho kinase系が深く関与しているものと推測された.