著者
岡崎 哲二 浜尾 泰 星 岳雄
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.15-29, 2005-01

本論文は1878年の創設から1930年代半ばにいたる東京株式取引所(東株)の発展を概観し,その上場企業の増加に影響を与えた要因を探る.東株の規模は,対GDP比で見て,同時代の他国に比べても,また現在の先進国に比べても,非常に大きなものであった.東株への上場基準は緩かで,特に現物市場への上場はほとんど規制されていなかったので,当時のデータを使ってどのような企業が上場を決定したのかを調べることができる.綿紡績企業を使った回帰分析から,資本金が大きい企業ほど,そして年齢が高い企業ほど上場する確立が高いことが確認できる.また,東日本の企業は西日本の企業よりも東株に上場する確立が高いが,この傾向は時代を経るにつれて,特に1918年の東株の組織改革以降,弱まった.組織改革は,上場株の増加を促す効果も持った.最後に,外部株主の権利を強めた1911年の商法改正も,東株への上場を増加させる効果を持った.