著者
田村 温美 筒井 英光 伊藤 純子 小原 亮爾 星 雅恵 久保田 光博 矢野 由希子 池田 徳彦
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.269-273, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
15

甲状腺・副甲状腺手術の後出血は1~2%の頻度とされている。頸部は狭い空間であることから,少量の出血でも血腫による静脈潅流障害により喉頭浮腫から気道閉塞に至る可能性がある。このため,甲状腺・副甲状腺手術において後出血は最も緊急性の高い合併症である。当科では,後出血予防の様々な取り組みにより,後出血に対する再開創率は0.5%と好成績であった。しかしながら,手術を行う限り後出血はどうしても一定の頻度で発生してしまうため,発生防止と同時に,早期発見と迅速な対応を行う取り組みが必要である。当科ではその取り組みのひとつとして,頸部マーキングを行っている。ひも1本でできる危機管理をコンセプトにこの頸部マーキングを「東京医大ひも法」と名付けて行っている。「簡便」かつ「安価」で導入可能であること,安全が「見える化」「数値化」することでチーム内での情報共有や早期発見に有用な方法である。ひも法における「マーキングが2cmずれたら主治医コール」は妥当な基準と考えている。