著者
山口 学 本多 英俊 本多 俊伯 池田 徳彦
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.13-16, 2018-02-10 (Released:2018-02-25)
参考文献数
5

誤嚥予防にはさまざまなものが報告されているが,療養型病床群においてはそれらの対策が十分に行えないのが現状である。われわれは誤嚥予防として黒胡椒に注目した。黒胡椒は咽頭へのサブスタンスPの放出を増加させることにより嚥下反射を改善して誤嚥を予防することが報告されている。今回,黒胡椒そのものを使用して誤嚥リスクを減らし抗菌薬使用および誤嚥性肺炎発症率を低下させられるか検討した。【対象】当院療養型病床群に入院している患者35名のうち32名。【方法】患者を2群に分け,60日ごとに黒胡椒使用群と非使用群を交換して両群に黒胡椒を使用し,120日間での発熱,抗菌薬使用を比較することにより誤嚥性肺炎の発生率を比較した。【結果】期間中に37.5℃以上の発熱を認めた症例は28例で,2日以上の発熱と誤嚥性肺炎を認め抗菌薬を使用した症例は11例であった。黒胡椒を使用した群は発熱例11例で,抗菌薬使用例は2例であり,有意に抗菌薬の使用頻度および日数を抑制した。【結語】黒胡椒は安価かつ容易に療養型病床群での抗菌薬使用を減少させた。
著者
田村 温美 筒井 英光 伊藤 純子 小原 亮爾 星 雅恵 久保田 光博 矢野 由希子 池田 徳彦
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.269-273, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
15

甲状腺・副甲状腺手術の後出血は1~2%の頻度とされている。頸部は狭い空間であることから,少量の出血でも血腫による静脈潅流障害により喉頭浮腫から気道閉塞に至る可能性がある。このため,甲状腺・副甲状腺手術において後出血は最も緊急性の高い合併症である。当科では,後出血予防の様々な取り組みにより,後出血に対する再開創率は0.5%と好成績であった。しかしながら,手術を行う限り後出血はどうしても一定の頻度で発生してしまうため,発生防止と同時に,早期発見と迅速な対応を行う取り組みが必要である。当科ではその取り組みのひとつとして,頸部マーキングを行っている。ひも1本でできる危機管理をコンセプトにこの頸部マーキングを「東京医大ひも法」と名付けて行っている。「簡便」かつ「安価」で導入可能であること,安全が「見える化」「数値化」することでチーム内での情報共有や早期発見に有用な方法である。ひも法における「マーキングが2cmずれたら主治医コール」は妥当な基準と考えている。
著者
江口 研二 足立 秀治 池田 徳彦 柿沼 龍太郎 金子 昌弘 楠 洋子 佐川 元保 鈴木 隆一郎 早田 宏 祖父江 友孝 曽根 脩輔 高橋 里美 塚田 裕子 中川 徹 中林 武仁 中山 富雄 西井 研治 西山 祥行 原田 真雄 丸山 雄一郎 三澤 順
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.985-992, 2003-12-30
被引用文献数
1 1

・低線量CT肺癌検診を実施することにより,非受診者群に比較して,受診者群の肺癌による死亡を有意に減少させるという成績は現在まで証明されていない.・低線量CT肺癌検診は,高危険群および非高危険群に対して,胸部写真による検診よりも末梢小型肺癌(腺癌)をより多く発見し,発見肺癌の6〜8割は病期I期肺癌である.・低線量CT肺癌検診では,受診者の被曝リスクを低減させるために,撮影条件,画像描出条件など読影環境を整備することが必要である.・低線量CT肺癌検診は,他のがん検診と同様に,検診の運営に際して,精度管理とその維持が必要である.・低線量CT肺癌検診の受診者には,検診一般の説明だけでなく,現状でCT検診の有用性に関するエビデンスの内容および想定される有害事象を含めて,説明と同意(インフォームドコンセント)を行うべきである.・医療経済学的な面も併せて,低線量CT肺癌検診の至適なあり方を確立するためには,解析可能な精度の高い実績を集積する必要がある.・本稿の低線量CT肺癌検診のあり方については現行の自治体検診時のCT検診,職域検診のみならず,人間ドックでのCT検診も念頭に置いたものである.
著者
池田 徳彦 吉田 浩一 本多 英俊 永田 真一 林 和 坪井 正博 土田 敬明 古川 欣也 奥仲 哲弥 平野 隆 中村 治彦 加藤 治文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.612-617, 2002
被引用文献数
2

内視鏡的蛍光診断は中心型早期肺癌,扁平上皮化生などの気管支微小病変の診断に有用と報告されている.当院では肺癌治療前,喀痰細胞診異常,術後の経過観察など600例に本検査を施行,合計997部位を生検し,組織診断と蛍光診断の診断率を評価した.癌病巣では白色光,蛍光に差を認めなかったが,蛍光診断で病巣の進展を客観的に把握し得た.化生病巣においては白色光では発見困難で蛍光でのみ診断された病巣は全体の約40%を占め,蛍光診断の有用性が示唆された.また,喀痰細胞診異常症例に蛍光内視鏡を併用することにより病変の局在同定率は白色光単独の場合の59%から72%へと上昇した.簡易型の蛍光診断装置(System of Autofluorescence Endoscope, SAFE, Pentax)は従来より用いられてきたLight Induced Fluorescence Endoscope(LIFE,Xillx)と同程度の診断能を有すると考えられた.中心型早期肺癌の治療戦略の一環として蛍光診断と超音波内視鏡検査を併用することにより浸潤範囲と壁深達度を正確に評価し適正治療を選択することが行われている.蛍光診断は特別な前処置も必要とせず,従来の内視鏡検査と併用することにより,日常検査の精度向上が期待でき,適応はますます拡大するものと思われる.一方,ラマン分光の応用やOptical Coherence Tomography(OCT)の出現は内視鏡診断にoptical biopsyという新たな進歩をもたらすであろう.