著者
藤原 卓 福本 敏 星野 倫範
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

DNAワクチンとは,抗原遺伝子を組み込んだ発現ベクターにより生体内で直接抗原タンパクを発現させ,免疫応答を惹起するもので,我々はグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)を標的とするDNAワクチンを構築する試みを行ってきたが,免疫反応を惹起する必要なタンパクレベルでの発現にいたらなかった.構造解析を行ってシグナル直下の約350AAの大きさの多型性領域に高い抗原性を決定し、そこを標的とする新たなDNAワクチン(pSecTag2-gtfB、pSecTag2-gtfC、pSecTag2-gtfD)を構築し,そこからさらにアデノウイスルのプロモーターをもつpAFC3をベースとしたDNAワクチンプラスミド(pAFC3-gtfB, pAFC3-gtfC, pAFC3-gtfD)を作成した.1.DNAワクチンの標的部位の抗原性の解析今回作成したpSecTag2-gtfB、pSecTag2-gtfC、pSecTag2-gtfDには大腸菌における発現プロモーターとしてLacプロモーターを持つので、大腸菌を用いてリコンビナントタンパクを発現させて、そのリコンビナントタンパクの抗原性を解析した.E.coli BL21-AI(Invitrogen)に形質転換し,0.2%のアラビノースを添加して発現を誘導した菌体を、抗GTF抗体をもちいてウエスタンブロットにて解析すると、すべてのDNAワクチンプラスミドで抗体との反応が認められたが、pSecTag2-gtfCが最も強く、pSecTag2-gtfBでは誘導されたタンパクの分解傾向が認められた.2.DNAワクチンプラスミドによる抗原タンパクの発現マウス由来293細胞に3種のDNAワクチンプラスミドを感染後、RNAを抽出し、それぞれのgtfに特異的なプライマーを用いてサザンプロットを行った.その結果、pSecTag2-gtfB、pSecTag2-gtfCに抗原タンパクの発現が認められたが、そのバンドはpSecTag2-gtfCが最も明確であった.これらの結果より、GTFに対するDNAワクチンプラスミドとしてGTFCを標的とすることが、最も効果が高い可能性が示唆された.今後は,pAFC3シリーズを用いて,in vitroおよびラット実験齲蝕系を用いたin vivoにおける抗う蝕作用を解析してゆく予定である.