著者
加藤 秀正 平井 英明 星野 幸一 松川 進
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-8, 2005-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
23
被引用文献数
3

土壌溶液のアルミニウム種とその濃度が植物の根圏環境の形成にどのような影響を及ぼすかを調べ,以下の結果を得た。1)土壌溶液におけるAl^<3+>主成分域のpHとpAlt'はいずれもほぼ4.5以下であった。2)Al_6(OH)_<15>^<3+>主成分域はpHが4.5〜6を示す土壌溶液のAlt'高濃度側に分布した。3)Al_6(OH)_<15>^<3+>主成分域pHにおけるAlt'低濃度側には単独で50%を上回るアルミニウム種が存在しない領域が存在した。4)Al(OH)_2^+主成分域はpHが5以上で,かつpAlt'が5.5付近以上に存在すると予想された。5)水耕と異なり土耕では根系の観察が困難であることから,幼植物の根が把握した土壌量が根系の発達程度の良好な指標となる可能性を示した。6)コムギの根による土壌の把握量が制限されるのは第1にAl^<3+>主成分域であり,次がAl_6(OH)_<15>^<3+>主成分域のうち,土壌溶液のpHが4.5〜5.5付近で,かつAlt'が4〜5とみなされた。7)Al_6(OH)_<15>^<3+>主成分域であっても,pHが5.5付近以上では根の土壌把握量への影響は小さい。これはAlt'値が10^<-5>mol L^<-1>(0.27mg L^<-1>)以下になるためであろう。8)土壌溶液の酸性アルミニウムが中和されるに伴い,根の伸長→根毛の発達・拡大→根による土壌把握量の増大へと進み,根圏における根と土壌間に連続性が保たれる結果,養水分の移動・拡散に好都合な環境が整っていくものと判断された。