著者
飯村 康二
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.199-200, 2005-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
5

1)水田においてリン酸肥料の肥効が低く,無リン酸区の水稲の,標準施肥区のそれに対する収量比が畑作物のそれに比べて高いことは,湛水・還元下の,また中性〜弱アルカリ性反応下の水田表層において,炭酸鉄(II)(シデライト)が生成・沈殿して鉄(II)イオンが反応系から除去されることに起因する,リン酸の溶解度上昇によるものであると考えられる.2)湛水・還元下で生成するリン酸鉄(II)(藍鉄鉱)そのものの溶解度上昇は,pHの約5以下への低下に伴って起きる上昇で,水稲生育条件下,約5以上のpHでは藍鉄鉱の溶解度は最低となる.3)炭酸鉄(II)の生成・沈殿の結果,無リン酸栽培下の土壌からの水稲へのリン酸供給量が,畑作物への供給にくらべて著しく高くなるとともに,落水後も還元状態に保たれる湿田土壌中の,20〜30cmの深さの部位に炭酸鉄(II)(シデライト)の結核がみられるようになった.また二酸化炭素供給の少ない,おもに1m以深の土層中に藍鉄鉱の斑紋・結核がみられることがあるようになったと考えられる.
著者
山崎 慎一 木村 和彦 本吉(手嶋) 博美 武田 晃 南條 正巳
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.30-36, 2009-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
34
被引用文献数
6

Over 1500 soils samples have been analyzed for Cd. Samples were 514 soils taken in such a way as to cover a wide range of soil types common to Japan (referred to as nationwide samples), 139 volcanic ash soils also taken nationwide scale (volcanic ash samples), and 887 soils taken from arable lands in Miyagi Prefecture, northeastern Japan (Miyagi samples). Histogram has revealed that the frequency distributions of Cd was positively skewed and coincided well with those of log normal distributions, indicating arithmetic mean value is not appropriate to represent the Cd status in soils. The anti-log values of the minimum, mean, maximum, and 95% confidence limit of the mean calculated using log transformed data were respectively 0.015, 0.27, 3.37 and 0.06〜1.09mg kg^<-1>. Whereas the higher outliers in Miyagi samples were polluted soils, those in nationwide samples were un-polluted dark red soils (Chromic Luvisols) and red soils (Orthic Acrisols) both derived from limestone. It is assumed that trace amounts of Cd contained in the parent materials as impurities at the initial stage of weathering were gradually concentrated during the succeeding weathering processes as almost all of CaCO_3 were lost. The above hypothesis is strongly exemplified in the findings that the concentration levels of more than 30 trace elements in these soils were also higher than those of the other soils. It is worth mentioning that the occurrence of soil samples containing more than 3mg kg^<-1> of Cd not necessarily indicates events related to the anthropogenic soil pollution. The concentration range of Cd in volcanic ash samples was apparently lower than that of the other two groups. Comparison of concentration levels of Cd between volcanic ash soils and non-volcanic ash soils after excluding outliers has revealed that Cd in the former were significantly lower than that in the latter.
著者
久馬 一剛
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.215-216, 2016-06-05 (Released:2017-06-24)
参考文献数
10
著者
中尾 淳 武田 晃 塚田 祥文 舟川 晋也 小崎 隆
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.290-297, 2011-08-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
35
被引用文献数
1

^<137>Csの土壌から農作物への移行低減化対策として,K飽和・乾湿処理によって土壌のCs保持能を向上させる手法について検討を行い,以下の結果を得た.(1)スメクタイトが優先して存在する水田土壌(Sm)に対してK飽和と48時間の50℃乾燥を行った結果,Kdが大きく増加し,さらに10回乾湿処理を施すことでKdの値はさらに増加した.(2)アロフェン質黒ボク土(Am)又は純鉱物イライトに対してK飽和・乾湿処理を行った結果,Kdの大きな変化は確認されなかった.(3)K飽和・乾湿処理によりKdが大幅に増加したSm7試料(1D, 10WD)に対してK脱着処理を行った結果,Kdの値は大きく減少したものの,K飽和・乾湿処理を施さなかったSm7試料のKdと比べると高い値が維持された.このように,土壌がスメクタイトを含む場合,K飽和・乾湿処理は土壌の^<137>Cs保持能を高めるために有効であることが分かった.この処理が実際に^<137>Csで汚染された土壌から農作物への^<137>Cs移行低減化に有効かどうかは,K施用方法や乾燥条件を変えて詳しく調べる必要がある.
著者
糟谷 真宏 安藤 薫 尾賀 俊哉 大橋 祥範 久野 智香子
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-11, 2022-02-05 (Released:2022-02-15)
参考文献数
25

1926年から95年間継続した愛知県安城市の連用試験水田(黄色土)における,三要素それぞれの欠如および三要素に有機物連用を加えた処理が水稲の収量性に及ぼす影響を,養分収支や土壌化学性の変化との関係から整理した.水稲の精玄米収量は,試験年数を経るにつれ(無肥料区,無リン区)<無窒素区<(無カリウム区,三要素区)<堆肥750 g m−2施用区<堆肥2250 g m−2施用区の大小関係に収束した.養分収支は,窒素は無窒素区以外,リンはリン無施用の試験区以外はプラスとなったが,カリウムは,無窒素区,無リン区,稲わら堆肥2250 g m−2施用区以外はマイナス収支となった.交換性カリウムや可給態リン酸などの作土中濃度は,1976年から40年以上の間増減傾向は認められないものの,養分収支を反映した処理区間の差が認められた.三要素区,無カリウム区のカリウム収支は毎年マイナスであり,カリウムは土壌から収奪されているにも関わらず,三要素区,無カリウム区の作土の全カリウム,非交換態カリウム,交換性カリウム濃度に増減傾向が認められないことから,土壌中のカリウムは動的平衡状態に達していると判断され,土壌の風化に伴うカリウム供給の可能性が示唆された.
著者
矢内 純太 岡田 達朗 山田 秀和
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.673-680, 2012-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
19
被引用文献数
4

日本の農耕地土壌の元素組成を明らかにし,その土壌型・土地利用・地域との関係を調べるために,日本全国から採取した水田あるいは畑の表層土壌計180点について,20元素の全濃度を分析した.すなわち,微粉砕試料を硝酸・フッ化水素酸・過塩素酸で湿式分解後,溶液のAl, Fe, Ca, Mg, Ti, P, Mn, Ba, V, Sr, Zn, Cu, NiをICP-AESで,K, Naを原子吸光法でそれぞれ定量した.全Se濃度は,試料の硝酸・過塩素酸分解液を2,3-ジアミノナフタレンと反応させた後シクロヘキサンで抽出し,HPLCで定量することにより求めた.全C, N濃度は乾式燃焼法で測定し,Si, O濃度は計算により求めた.主要10元素は,中央値で504g-O kg^<-1>, 291g-Si kg^<-1>, 76.6g-Al kg^<-1>, 36.8g-Fe kg^<-1>, 24.8g-C kg^<-1>, 15.0g-K kg^<-1>, 14.3g-Na kg^<-1>, 11.9g-Ca kg^<-1>, 8.78g-Mg kg^<-1>, 3.82g-Ti kg^<-1>となり,全体の98.7%を占めた.他の10元素の中央値は,2.15g-N kg^<-1>, 1.43g-P kg^<-1>, 705mg-Mn kg^<-1>, 394mg-Ba kg^<-1>, 140mg-V kg^<-1>, 125mg-Sr kg^<-1>, 90.5mg-Zn kg^<-1>, 24.5mg-Cu kg^<-1>, 14.3mg-Ni kg^<-1>, 0.42mg-Se kg^<-1>であった.この値は,日本の農耕地土壌の元素組成の代表値とみなされた.土壌型別では,黒ボク土でAl, Fe, C, N濃度が比較的高く,沖積土でSi, K, Ba濃度が比較的高いこと,また赤黄色土でCa, Mg, Na濃度が極めて低いことが示された.土地利用別では,畑土壌の方が水田土壌よりもAl, Fe, C, Ca, Mg, Ti, N, P, Mn, V, Se度が有意に高くSi, K, Ba濃度が有意に低かった.ここで,ほぼ同一地点で採取された25組の水田・畑土壌についてはどの元素濃度も有意差はなかったため,上記の違いは管理よりも土壌型の違いによるものと判断された.地域別では,元素組成データに基づくクラスター分析により,1)沖縄2)北海道・東北・関東・中国・九州,3)北陸-中部・近畿・四国の3グループに分かれることが示された.以上の知見は,持続的な食料生産や環境保全の推進のための基礎情報として重要であると結論された.
著者
陽 捷行
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.267-277, 2016-08-05 (Released:2017-08-09)
参考文献数
38
被引用文献数
7
著者
熊澤 喜久雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.207-213, 1999-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
40
被引用文献数
41
著者
若林 正吉 田村 憲司 小野 信一 六本木 和夫 東 照雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.573-583, 2010-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
52
被引用文献数
2

大宮台地の西縁部では,荒川の河川敷に存在する沖積土を台地上の火山灰土畑に運びこむ「ドロツケ」という客土作業が続けられていた.本研究は,ドロツケによる人為的土壌生成過程における土壌特性の変化を明らかにすることを目的として,長年のドロツケにより,沖積土が元来の土壌の上に厚く堆積した埼玉県北本市の圃場の土壌,台地上の火山灰土,および河川敷沖積土において,土壌断面調査と土壌理化学性の分析を行い相互に比較した.ドロツケにより,土壌の固相部が増大し,最大容水量および水分含量が減少した.沖積土中のAl_oおよびSi_o含量は,火山灰土の1/10以下であった.この沖積土の客土により,ドロツケ畑では客土層上層ほどリン酸吸収係数が減少し,可溶性無機態リン酸の内のCa型リン酸の割合,有効態リン酸量が増大した.沖積土には多量の交換性Caが含まれることにより,ドロツケ畑にCaが供給され,土壌pHも上昇した.ただし,ドロツケ畑では,Caの溶脱傾向が著しく,とくに,作土層では,土壌pHが低い値を示した.客土層の厚さと乾燥密度ならびにSi_oの分析結果から,この圃場への客土投入量は,1ha当たり5000t程度と試算された.
著者
松本 美枝子
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.345-352, 1990
被引用文献数
1

ハクサイにおける,ゴマ症発生と基肥窒素施用量(10a当たり10,20,30kg)の関係を体内成分の面から検討した.基肥窒素施用量の増加に伴い生育が促進され,ゴマ症の発生も増加した.基肥窒素30kg施用区でとくに発生が著しかったが,10kgおよび20kg施用区であっても生育が促進された場合は発生が多くなった.この発生株ではNO_3-Nおよびαアミノ態窒素濃度が上昇し,糖濃度は逆に低下する傾向を示した.また,機関別体内成分とゴマ症発生の関係では,葉柄よりむしろ葉身中でのNO_3-Nおよびαアミノ態窒素濃度の蓄積が発生を助長した.これらの事実から,ゴマ症の発生を防止するためには,基肥窒素施用量を20kg以下にすることが必要と考えられた.