著者
星野 綾美 小暮 敏明 伊藤 克彦 萬谷 直樹 田村 遵一
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.649-653, 2004-09-20
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

遅延化した帯状態疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)に対し烏薬順気散料が奏効した一例を経験した。症例は76歳,女性。既往に糖尿病はあるが,食事療法でコントロール良好。主訴は右頬部痛。2002年10月,右頬部の帯状態疹に罹患し近医に入院,アシクロビルの点滴静注を受け皮疹は消失したが,同部位のピリピリする疼痛が持続した。PHNの診断でカルバマゼピン内服に加え,星状神経節ブロックを受けたが痛みは不変であった。Visual analogue scale (VAS)では10cm中7cmの評価であった。5ヵ月間同レベルの疼痛が持続したため,和漢診療を目的に2003年3月31日当科紹介受診。受診時身体所見では,右三叉神経第2枝領域を中心とした,ピリピリする自発痛があったが,味覚や頭頚部の触覚は正常であった。疼痛は持続性で強さには日内変動があり,疲労時に増強する傾向にあった。烏薬順気散料を投与して1ヵ月後には疼痛が軽減しはじめ,2ヵ月後にはVAS2cm となった。3ヵ月後,疲労時以外の疼痛はほぼ消失した。その後も再発はみられていない。本症例の経験から遅延化したPHNにおいても烏薬順気散料を鑑別に挙げる必要性が示唆された。