著者
萬谷 直樹 岡 洋志 佐橋 佳郎 鈴木 理央 綾部 原子 鈴木 まゆみ 神山 博史 長田 潤 木村 容子 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.197-202, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
27
被引用文献数
17 14

甘草による偽アルドステロン症の頻度については十分にわかっていない。われわれは甘草の1日量と偽アルドステロン症の頻度の関係について,過去の臨床研究を調査した。甘草を1日1g 使用した患者での偽アルドステロン症の頻度は1.0%(平均)であった。1日2g,4g,6g での頻度はそれぞれ1.7%(平均),3.3%,11.1%(平均)であった。過去の文献において,偽アルドステロン症発症頻度の用量依存的な傾向が示唆された。
著者
萬谷 直樹 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.72-81, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
22

国際癌研究機構は発癌実験の結果などからベルベリンを含有するヒドラスチス根をグループ2B(発癌性を示す可能性がある)に分類した。超高濃度のベルベリンを負荷した実験用細胞でもDNA 障害が確認された。これらをふまえ日本医師会雑誌に掲載された医師会会員による2つの投稿は,黄連・黄柏がベルベリンを含有し,ベルベリンや大黄の成分がDNA 障害を示すことから,黄連・黄柏・大黄が発癌性・生殖毒性を持つと主張した。しかし,同投稿には数々の科学的な誤りや恣意的な記述が多いことが明らかとなった。実験で毒性を示したベルベリン濃度は漢方薬の服用では到底得られない濃度である。黄連・黄柏そのものの発癌性や生殖毒性を示すデータは確認されていないにもかかわらず,投稿内容が週刊誌にも取り上げられて患者を無用の不安に陥れていることから,会員投稿の数々の誤りに対して科学的根拠を示して反論した。
著者
萬谷 直樹 八巻 百合子 藤井 泰志 金子 明代 手塚 健太郎 喜多 敏明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.185-188, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
4

2004年10月から2008年9月までに,我々の漢方クリニックを訪れた患者を連続して登録し,牛乳飲用で腹部膨満感や腹痛,下痢が生じるかどうかを調査した。全登録数3175例のうち35例(1.1%)が牛乳不耐症の症状を訴えた。その35例中20例で乳糖コーティング製剤が試みられたが,試みられた20例中13例はとくに症状が出現せず,実際に乳糖コーティング製剤で乳糖不耐症の症状が引き起こされる頻度は1%を下回るものと推測された。
著者
鈴木 理央 岡 洋志 萬谷 直樹 渡邊 妙子 神山 博史 長崎 直美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.250-254, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
18
被引用文献数
3

顔面痛のある38歳女性。三叉神経痛と診断され,カルバマゼピンで痛みはある程度軽減していたが,漢方治療を希望して来院した。30年前の事故で顔面を強打した既往を手掛かりに,治打撲一方をカルバマゼピンと併用したところ痛みは改善し,高木の圧痛点も軽減もしくは消失し,最終的にカルバマゼピンを廃薬できた。外傷の既往と高木の圧痛点を認める神経痛症例には,同薬を試みる価値があると思われた。
著者
萬谷 直樹 佐橋 佳郎 岡 洋志
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.52-56, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
17

中医学の理論では芍薬は酸味があり収斂作用をもつとされている。芍薬の煎液の味を調査するため,12人のボランティアが赤芍と白芍の煎液を試飲した。各人は赤芍と白芍の味が五味(酸,苦,甘,辛,鹹)のうちどれに近いかを選択した。一番感じる味として,ほとんどの者は苦味を選択したが,酸味を選択した者はいなかった。少なくとも現代においては,芍薬にはほとんど酸味がないと考えられた。芍薬の収斂作用と筋弛緩作用について酸味と関連づけて考察を行った。
著者
星野 綾美 小暮 敏明 伊藤 克彦 萬谷 直樹 田村 遵一
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.649-653, 2004-09-20
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

遅延化した帯状態疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)に対し烏薬順気散料が奏効した一例を経験した。症例は76歳,女性。既往に糖尿病はあるが,食事療法でコントロール良好。主訴は右頬部痛。2002年10月,右頬部の帯状態疹に罹患し近医に入院,アシクロビルの点滴静注を受け皮疹は消失したが,同部位のピリピリする疼痛が持続した。PHNの診断でカルバマゼピン内服に加え,星状神経節ブロックを受けたが痛みは不変であった。Visual analogue scale (VAS)では10cm中7cmの評価であった。5ヵ月間同レベルの疼痛が持続したため,和漢診療を目的に2003年3月31日当科紹介受診。受診時身体所見では,右三叉神経第2枝領域を中心とした,ピリピリする自発痛があったが,味覚や頭頚部の触覚は正常であった。疼痛は持続性で強さには日内変動があり,疲労時に増強する傾向にあった。烏薬順気散料を投与して1ヵ月後には疼痛が軽減しはじめ,2ヵ月後にはVAS2cm となった。3ヵ月後,疲労時以外の疼痛はほぼ消失した。その後も再発はみられていない。本症例の経験から遅延化したPHNにおいても烏薬順気散料を鑑別に挙げる必要性が示唆された。
著者
萬谷 直樹 岡 洋志 渡邊 妙子 長崎 直美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.377-381, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

黄芩含有漢方薬による肝障害の頻度を推定するため,当院の全てのカルテをレトロスペクティブに調査した。黄芩含有方剤を服用した2430例のうち,1547例(63.7%)で肝機能検査が施行されていた。1547例のうち黄芩含有漢方薬による肝障害が否定できない例を19例(1.2%)みとめた。その肝障害の臨床像は過去の報告と大差がなかった。 今回の調査でも黄芩含有方剤による肝障害の頻度は1%前後であると推測され,過去の文献報告と一致していた。
著者
萬谷 直樹 小尾 龍右 藤井 泰志
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.204-207, 2010-06-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
8

2003年にRAを発症した44歳男性.MTX,PSL,サラゾスルファピリジンでも改善しなかった.2007年MTXとPSL15mg/日でCRPは低下したが,PSL減量で再燃.2008年12月当院受診.漢方エキス剤では改善なし.2009年3月からのエタネルセプトとMTX療法の効果は限定的で,MMP-3も上昇.8月より桂枝二越婢一湯加苓附(煎じ薬)を開始.痛みは10%まで低下し,DAS28-CRPやMMP-3も減少.今日まで低値を維持している.
著者
萬谷 直樹 後藤 博三 藤永 洋 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.275-280, 1999-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

慢性便秘は一般に弛緩性便秘と痙攣性便秘に分類される。 痙攣性便秘には刺激性下剤は不向きであり, 長期の使用は原則として禁忌とされている。しかし実際には, 服用しなければ排便が得られないという理由で, 刺激性下剤が連用されていることも多い。今回, 加味逍遥散が奏功した慢性便秘の4例を経験した。症例1~3は痙攣性便秘であり, 症例1, 3, 4は刺激性下剤を常用していた。いずれも刺激性下剤や大黄含有方剤で, 腹部不快感や頻尿などの症状が出現する患者であった。加味逍遥散を使用し,良好な排便が得られるとともに, いらいら, のぼせ感, 肩こり, 倦怠感, 月経痛, 頻尿などの全身症状も改善された。刺激性下剤を連用していた3例は, その離脱が可能となった。慢性便秘の薬物治療においては, 刺激性下剤の長期連用を回避するために,加味逍遥散などの漢方方剤が果たす役割は大きいと考えられた。
著者
藤永 洋 萬谷 直樹 喜多 敏明 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.267-273, 1999-09-20
被引用文献数
1

激しい腹痛発作を繰り返すガス症状優位型の過敏性腸症候群に対して、『医学統旨』の柴胡疎肝湯が著効した一例を経験した。 患者は31歳男性。1994年11月より2〜3ヶ月ごとに激しい腹痛発作と腹部膨満感を訴え、近医へ救急受診を繰り返していた。これまでに3回入院して精査を受けたが器質的異常は認められなかった。腹痛発作に腹部膨満感などのガス症状を主に伴うことよりガス症状優位型の過敏性腸症候群と診断した。また、腹部単純X線写真で左結腸脾彎曲部に著名なガス像を認めたことから脾彎曲部症候群が疑われた。1996年6月より当科外来で『医学統旨』の柴胡疎肝湯を開始したところ、その後症状は出現しなくなった。さらに感情不安定や立ちくらみ、皮膚症状なども軽快した。 柴胡疎肝湯の目標は四逆散証で気鬱の病態が強いことであり、ガス症状優位型の過敏性腸症候群に対して有効な処方であることが示唆された。