著者
渡辺 泰彦 公文 啓二 矢作 直樹 春名 優樹 林 英明 松井 淳〓
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 1997-05-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
11

成人心臓血管術後の患者22名を対象にNO吸入療法を施行した.適応疾患は低酸素血症型呼吸不全,肺高血圧症,右心不全であった.低酸素血症型呼吸不全の患者において10ppm以下の濃度で酸素化能は著明に改善した.肺高血圧症例では有意の肺動脈圧の低下がみられたが,反応の程度は一様でなく,肺動脈組織の器質的変化の程度によると推察された.右心不全症例は左心補助心臓が装着され,左心拍出量に追従できない右心に対し右室の後負荷軽減目的に,また周術期に右室梗塞症を起こした症例に対しNO吸入療法を行なったが,混合静脈血酸素飽和度は有意に上昇し,右心房圧および肺動脈圧は有意に低下した.以上より心臓血管術後の上記病態に対するNO吸入療法は有用と思われる.