著者
原 哲也 稲冨 千亜紀 小出 史子 前川 拓治 趙 成三 澄川 耕二
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.316-320, 2009

エホバの証人に対する帝王切開術の麻酔を, 動脈圧心拍出量 (APCO) から算出した酸素供給量を指標として管理した. 患者は40歳代の女性. 身長150cm, 体重56kg. 子宮筋腫合併高齢出産であったが, 宗教的信条から輸血を拒否したため, 帝王切開術が予定された. 麻酔は0.5%高比重ブピバカインによる脊髄くも膜下麻酔で行い第4胸髄レベル以下の知覚低下を得た. 術後鎮痛は0.2%ロピバカインによる持続硬膜外麻酔で行った. 同種血および自己血輸血は行わず, 貧血による酸素供給量の減少に対して, 輸液および昇圧薬で心拍出量を増加させ代償した. APCOの測定は低侵襲であり, 酸素供給量を指標とした麻酔管理に有用であった.
著者
安江 雄一 濱部 奈穂 日生下 由紀 園田 俊二 香河 清和 谷上 博信
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.142-147, 2013-01-06
参考文献数
5

当院では2010年12月,業務中に突然の停電を経験した.自家発電設備は問題なく機能したが,停電発生後約1時間,原因特定や復旧のめどがまったく立たない状態であった.その間,患者搬送のエレベーターが使用できず,術後患者の管理に問題となった.この経験から,復旧のめどを含めた情報収集が重要であり,自家発電装置の性能や備蓄燃料は病院ごとにばらばらで場合によっては停電中の業務に支障が出うること,各機器の電源種別を決めておかないと思わぬ機器が動かず困る可能性があること,自家発電に切り替わるときに数十秒の停電となるため再起動が必要となる機器があり,その際実際に適切に操作できること,これらを平時より確認し,手順化しておくことが重要と思われた.
著者
川口 哲 堺 登志子 児玉 光顕 上山 博史 木内 淳子 吉川 清
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.359-362, 1986-11-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
8

マイルズ手術後の膀胱内結石の50歳の患者に対してペルカミンS®による脊椎麻酔を施行しT6以下に十分な麻酔が得られたにもかかわらず priapism を呈した症例を経験した.患者の陰茎は, 脊椎麻酔の効果が薄れるにつれ改善傾向を示し麻酔施行後約2.5時間で元の状態に復帰した. 一週間後, 笑気-酸素-ケタミンによる全身麻酔に変更し手術を行ない得た. ケタミンは持続滴下を行ない1mg/kgの時点で手術操作を開始し, 総量2mg/kgを静注したが priapism の発生は認められなかった.
著者
突沖 満則 松三 昌樹 水川 俊一 阿部 晋也 板野 義太郎 小坂 二度見
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.263-269, 1984-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
27

血清亜鉛は, 熱傷, 心筋梗塞, 手術侵襲および急性感染症などにより減少することが報告されている. 今回われわれは, 吸入麻酔下に予定手術を行なった24例について, 術後7日目までの血清亜鉛を測定したので報告する.大手術群16例の平均血清亜鉛は, 術前101±15.5μg/100mlであったものが, 術後2時間で57±10.6μg/100mlと最低となり, その後漸増し, 術後3日目には94±24.6μg/100mlと術前のレベルに回復した.一方, 小手術群8例の平均血清亜鉛は, 術前104±22.8μg/100mlから, 術後1日目に78±18.0μg/100mlと最低となり, 以後漸増し, 術後3日目には84±16.7μg/100mlと術前のレベルに回復した.術後1時間および2時間の血清亜鉛を大手術群と小手術群で比較すると、大手術群で有意に低値を示した.このように, 血清亜鉛減少の開始時期と程度は手術侵襲の大きさに相関していると考えられるが, 血清亜鉛が術前のレベルに回復するまでの期間は, 大手術群と小手術群で有意差はなかった.
著者
井上 憲臣 河西 稔
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.453-456, 1997-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
3
被引用文献数
3 1

気管内挿管時には,歯牙の状態によって喉頭鏡の操作により歯牙や補綴物(継続歯,架工義歯)が脱臼,破損,脱離する可能性がある.これを防止するために,現在,われわれはモデリングコンパウンドを使用しているが,今回,このモデリングコンパウンドと既製のマウスプロテクター,マウスコレクター(成人の平均値的模型上で成型試作したもの),および,プレス式カスタムマウスガード(各症例ごとに歯型をとり,模型上にプレスをして作製)を比較した.モデリングコンパウンドは,気管内挿管操作直前に作製し,各症例の歯牙に合った成型ができたことより,その効果も満足すべきものであった.しかし,装着する際に,ある程度手技の熟練さが必要であり,モデリングコンパウンドの厚さが喉頭鏡による喉頭展開操作に制限を感じさせることがあった.これに反し既製のマウスプロテクター,マウスコレクターは,装着に熟練度は必要でなかったが,すべての症例に適合させることは困難で,歯牙損傷の目的を完全に達成できるとは考えられなかった.プレス式カスタムマウスガードは,作製時間と,実費で600円程度の費用を要するが,各歯牙に確実に適合し,モデリングコンパウンド以上に健全隣在歯との連結による固定効果があるため,特に動揺歯のある場合に安心して挿管できるものと考えられた.
著者
菅 弘之 能沢 孝 安村 良男 二木 志保 田中 伸明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 1988-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
21

収縮性の変化が心臓の酸素消費量に及ぼす影響は古くて新しい問題である. 我々は, この問題に新しい概念-収縮期圧容積面積 (PVA)-を用いて挑戦している. PVAは, 圧容積図面中の特定の面積であるが, 収縮によって発生する心臓の総機械的エネルギーを表すと考えられる. イヌ心臓を用いての実験では, 収縮性が一定なら, PVAは酸素消費量と直線的に良く相関した. 収縮性を高めると, この関係は酸素消費量を増すように平衡移動した. それは主として興奮収縮連関のための酸素消費量の増加による. この際, PVAに依存する酸素消費量は常にPVAの変化に比例することから, 収縮機構そのもののエネルギー効率は不変と考えられる.
著者
井出 徹 水口 公信 伊東 範行 野口 照義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.22-26, 1991-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
15

アルコールは人間生活の潤滑剤であるが,飲酒が直接・間接の原因となり発症した外傷は数多い.アルコールは外傷の病態を複雑化し,診断・治療に多大の影響を及ぼす.このため飲酒外傷患者に対する緊急手術の麻酔は様々な問題点を抱えている.今回我々は血中アルコール濃度を測定し得た外傷患者の麻酔管理につき検討を加えたので報告する.
著者
濱田 宏 木村 健一 遠藤 恵美子 福井 明 藤田 喜久 高折 益彦
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.471-479, 1991-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
23

局所麻酔薬に添加した血管収縮薬が脊椎麻酔の持続時間に及ぼす効果を検討した.下肢の予定手術患者を対象に,ネオペルカミンS単独群(C群),エピネフリン0.1mgおよび0.2mg添加群(E1群,E2群),ノルエピネフリン0.1mg添加群(NE群)に分けた.最高レベルより2椎体,4椎体低下する時間(分)はE1群でそれぞれ平均120分,178分,E2群でそれぞれ145分,191分,NE群でそれぞれ142分,180分で,ともにC群の95分,135分より有意に延長していた.しかし,E1,E2,NE群の間に有意差を認めなかった.NEがEより勝る利点を見出すことはできなかったが,NEの添加でも有意な延長効果を認めた.
著者
奥田 みのり 一戸 達也 金子 譲
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.156-159, 2001-04-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
4

市販の未開封局所麻酔薬バイアル,全身麻酔薬バイアルおよび輸液ボトルのゴム栓の無菌性と,消毒用アルコール綿によるゴム栓清拭の意義について検討した.また,これらの薬剤が菌によって汚染された場合にどのような発育を示すのかについても観察した.バイアルのカバーを取り除いた直後のゴム栓には,細菌および真菌が検出されなかった.しかし,アルコール綿で清拭した後では,20%に真菌の集落が検出された.リドカインバイアルにstaphylococous aureusならびにCandidaalblcansを播種したところ,生菌数は経時的に減少した.しかし,プロポフォールバイアルや輸液ボトルに播種された菌は24時間以降有意に増加した.
著者
升田 好樹 七戸 康夫 表 哲夫 高橋 広巳 小瀧 正年 並木 昭義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.777-780, 1992 (Released:2008-12-11)
参考文献数
9

キシロカインゼリー®によるアナフィラキシーショックを経験した.症例は51歳男性,中咽頭腫瘍術後,下顎骨骨折のため観血的整復術を予定した.既往に麻酔薬によるアナフィラキシーショックがあった.挿管困難が予測され,経鼻挿管のため鼻腔内にキシロカインゼリー®を注入し,経鼻用エアウェイを挿入したところショック状態となった.気管内挿管を試みたが心室細動となり,ただちに輸状甲状間膜切開を行ない,直流除細動により心拍再開し,なんら後遺症なく回復した.皮内テストではメチルパラベンが疑陽性,カルボキシメチルセルロースナトリウムが陽性であり,アレルギー反応の原因として添加物を考慮する必要性を痛感した.
著者
竹田 智雄 棚橋 徳重 飯田 宏樹 太田 宗一郎 加藤 洋海 山本 道雄
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.441-446, 1989-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
22

三叉神経障害を経過中の早期に合併した混合性結合組織病の一例を経験した. おもな臨床症状は, レイノー現象, 左顔面のしびれ感, 四肢筋肉低下, 多発性関節痛, 嚥下障害, 全身筋肉痛であり, 血清学的には抗核抗体陽性 (speckled patern), 抗RNP抗体陽性, 抗Sm抗体は陰性であった. 三叉神経障害は, 第二枝および第三枝に著明であり, ステロイド療法に抵抗性であった. チクロピジンにより一時的に寛解したものの再び増悪した. SGBにより症状は改善し, さらにSGBとOHPの併用により, 左上歯肉部を除いてほぼ左右差がなくなる程度まで改善した.
著者
藤田 宙靖
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.990-998, 2013
被引用文献数
1

訴訟法学上,古くから,「裁判(司法)は法の執行なのか,裁判が法を創るのか」ということが問われてきた.最高裁判事としての私の体験に照らせば,我が国の現行法制度下,裁判官の行動規範として期待され,また機能しているのは,「具体的な個々の紛争につき最も適正な解決を図る」ということであり,決して法律の厳密な適用や憲法・法の一般原理等の実現そのものが自己目的とされているわけではない.従来の最高裁判例の意義を正確に理解するためにも,この点についての理解は極めて重要である.
著者
安部 能成
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.715-721, 2014

緩和ケアとは,命を脅かす病気に付随した問題に直面した患者,および患者家族の人生のQOLを改善する方法,といわれている.これは,身体的,心理社会的,スピリチュアルな次元への広がりを持つため,その対応には複数の専門職によるチーム医療が必要である.日本緩和医療学会の調査によれば,全国から480以上の緩和ケアチームの登録があるが,そのメンバーは医師,看護師,薬剤師,MSW,リハビリテーション専門職,栄養士,臨床心理士,歯科医・歯科衛生士となっている.そこでのリハビリテーション専門職の役割は,その日が訪れるまで最大限のADL,およびQOLの維持に努めることであり,目的において緩和ケアの定義と同一であるが,手段において異なる.
著者
小西 敏郎
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.418-426, 2009-07-15

いま全国の多くの地域基幹病院やセンター病院などの急性期病院には手術患者が集中しつつあり, 麻酔体制や手術室の整備が必要とされている. しかし手術室数が限られたまま, 増員することの不可能な麻酔科や外科の医師, 手術室看護師の自己犠牲的な粉骨砕身の努力で, ようやく急増する手術をこなしているのが実情である. 医療安全の面からは, 手術室での安全性の確保はきわめて重要である. ミスが少なく安全に効率よく手術室を運営するには, 多職種の医療者が協力してチーム医療を推進することが重要であるが, そのためにも手術室においては麻酔科医が強力なリーダーシップを発揮することが必要であると外科医として実感している. そこでNTT東日本関東病院における手術室の運営の実際, 電子カルテやパスの普及による麻酔科医と外科医および手術室看護師とのチーム医療の展開の現況を紹介し, 安全で効率的な手術室運営を行うにあたっての麻酔科医の役割の重要性について, 外科医の立場から述べた.
著者
大浦 由香子 田中 基 清水 昌宏 武井 秀樹 照井 克生 小山 薫
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.90-94, 2014
被引用文献数
1

27歳,一絨毛膜二羊膜性双胎の初産婦.妊娠31週より切迫早産および妊娠高血圧腎症のため当院に入院中であった.妊娠32週に肺水腫による呼吸不全および低酸素血症が出現し,緊急帝王切開術が予定された.手術台に移動させた直後に心肺停止となり,直ちに心肺蘇生を開始するとともに産科医に帝王切開を開始するよう促した.心停止4分後に手術開始し,同時に心拍再開を確認,1分後に2児とも娩出した.児娩出後の母体呼吸循環状態は安定し,母・2児とも後遺症なく退院した.妊婦の心肺蘇生法とともに「死戦期帝王切開術(perimortem cesarean section:PCS)」の知識の普及およびトレーニングが望まれる.
著者
加藤 隆文 米良 仁志 前田 岳 細山田 明義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.217-222, 2002-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Electroconvulsive Therapy(以下ECT)においてプロポフォールまたはチオペンタールにて麻酔し,投与量の増減によってそれぞれを2群に分け,ECTによる痙攣時間と循環動態の変動を検討した.両薬剤ともに投与量が増すと循環動態は安定したが,投与量が少ないとチオペンタール群で変動が大きかった.プロポフォールは投与量を増すと痙攣時間が有意に短くなったが,チオペンタールは投与の増量による痙攣時間の短縮幅が小さかった.痙攣時間の観点からはプロポフォールの投与量は1.4mg・kg-1までにとどめるべきである.プロポフォールは,循環制御のため投与量をそれ以上増すと肉眼的観察をする限りECTの痙攣時間が短縮してしまう点でECTの麻酔として望ましくない.
著者
渡辺 泰彦 公文 啓二 矢作 直樹 春名 優樹 林 英明 松井 淳〓
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 1997-05-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
11

成人心臓血管術後の患者22名を対象にNO吸入療法を施行した.適応疾患は低酸素血症型呼吸不全,肺高血圧症,右心不全であった.低酸素血症型呼吸不全の患者において10ppm以下の濃度で酸素化能は著明に改善した.肺高血圧症例では有意の肺動脈圧の低下がみられたが,反応の程度は一様でなく,肺動脈組織の器質的変化の程度によると推察された.右心不全症例は左心補助心臓が装着され,左心拍出量に追従できない右心に対し右室の後負荷軽減目的に,また周術期に右室梗塞症を起こした症例に対しNO吸入療法を行なったが,混合静脈血酸素飽和度は有意に上昇し,右心房圧および肺動脈圧は有意に低下した.以上より心臓血管術後の上記病態に対するNO吸入療法は有用と思われる.
著者
菊池 幸恵 樋口 比登実 増田 豊 橋本 誠 岡本 健一郎 八代 亮 細山田 明義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.609-612, 1999-12-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10

要旨 レーベル遺伝性視神経症(以下Leber病)の診断にて眼科的治療を受けるも回復せず,星状神経節ブロック(以下SGB)を施行し,両眼視力回復が認められた症例を経験した.症例は20歳男性.当科初診時視力(以下すべて矯正視力)は右眼0.07,左眼0.02,視野上大きな中心暗点を認めた.急性期の右眼に対し,1日2回のSGBによる治療を開始し,治療開始7ヵ月後(左右SGB合計約200回),視力右0.6,左0.2,視野上も中心暗点が縮小し,中心視力も出現,週1回の外来通院となっている.眼疾患に対するSGBの作用機序は未知の部分も多いが,副作用なく長期にわたって治療可能なSGBは,治療法の一つとして選択されうると考えられた
著者
原野 和芳 甘蔗 眞純 佐藤 道子 高松 純 高橋 成輔
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.293-299, 2002-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10

患者が麻酔とその危険性を理解するための支援について調査・検討した.情報提供の方法として麻酔前回診,「麻酔に関する説明書(以下同意書)」,麻酔・手術室全般をイラストで説明したパンフレットという3種類を用いた.結果は,麻酔および手術室手順の理解では同意書やパンフレット配付の有無で差はなかった.同意書は危険性への認識を高めた反面,不安を感じたという評価の割合が高く,前向きな気持ちに負の影響を与える可能性が示唆された.パンフレットは不安を軽減する可能性を認めた.以上のことから麻酔に関する危険性の理解を促進し,かつ不安を軽減するためには,同意書とパンフレット両方を麻酔前回診に配付することが有用であると考えた.
著者
福井 明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.663-667, 1998-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
14

過去5年間に経験した血液製剤使用拒否患者12名の麻酔前の問題点について検討した.全員がエホバの証人信者で,麻酔回数は13回,すべて全身麻酔症例であった.麻酔前の問題として,血液製剤使用拒否の意思表示の遅れ,補助手段に対する知識不足,初回提出の免責証書に受入れ可能な補助手段の記載もれ,家族間での意思不統一などが認められた.信者自身が使用可能な血液製剤と補助手段を熟知し,記載もれのない免責証書の作成と携帯および家族間の意思統一が望まれる.一方,医療機関と医師は,血液製剤使用拒否患者への対処方針決定とマニュアル作成とその明示が必要である.