著者
キリアン マティアス 春日川 路子
出版者
日本比較法研究所 ; [1951]-
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.127-135, 2016

ドイツでは近年,弁護士についてさまざまな都市伝説が流布されている。その一つに,弁護士職は「最後の逃げ道」である,裁判官や検察官,公証人などといった,一番に目標とする法律専門職に就くことができなかった人間が不本意ながら弁護士になっている,との噂がある。このような弁護士は「必然弁護士(Muss-Anwälte)」と呼ばれ,これを主要なテーマにした本も出版されている。だが,果たして噂は本当なのだろうか? ドイツの若手弁護士は,その多くが「しかたなく」弁護士職に就いているのだろうか? 筆者のマティアス・キリアン教授(ゾルダン研究所代表,ケルン大学)は,弁護士認可を受けたばかりの若手弁護士を対象とする聞き取り調査の結果から,この都市伝説は誤りであると結論づける。それに止まらず,若手弁護士のほとんどが望んで弁護士職に就いていること,ならびに,過去の類似の調査結果と比較すると,現在は弁護士こそが若手弁護士にとっての理想の職業であることを明らかにする。