著者
春木 伸裕 佐藤 篤司 杉浦 正彦 呉原 裕樹 辻 秀樹
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.487-490, 2010-03-31 (Released:2010-05-11)
参考文献数
15
被引用文献数
4

症例は1型糖尿病で通院中の55歳女性で,インスリン注射を3日前から自己中断し意識障害を呈し入院となった。血液検査にて糖尿病性ケトアシドーシスと診断し治療を開始した。翌日38℃の発熱と腹部膨満を訴えたため,緊急CTを施行した。腹水,門脈ガス,広範な腸管気腫を認め,腸管壊死による急性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。開腹すると,回腸末端の約200cmの回腸が分節的に壊死しており,S状結腸も暗紫色を呈し虚血に陥っていた。上腸間膜動脈および下腸間膜動脈は本幹から末梢まで拍動を触知できたことから,非閉塞性腸管膜虚血症(nonocclusive mesenteric ischemia: 以下,NOMI)と診断し,壊死した腸管の切除と下行結腸に人工肛門を造設した。NOMIは主幹動脈に器質的閉塞がないにもかかわらず,腸管に虚血あるいは壊死を生じる予後不良の疾患で,自験例は著明な脱水と,高血糖による高浸透圧が増悪因子となり,NOMIを発症したものと考えられた。
著者
佐藤 篤司 桑原 義之 篠田 憲幸 木村 昌弘 石黒 秀行 春木 伸裕 杉浦 弘典 田中 直 藤井 義敬
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.607-612, 2004-03-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
20

1992年1月から2002年12月までのステロイド投与患者に対する腹部救急手術18例を対象とした。ステロイド投与適応疾患は関節リウマチ7例, 進行性全身性硬化症+皮膚筋炎1例, 全身性紅斑性狼瘡1例, 悪性リンパ腫2例, 骨髄性白血病2例, 再生不良性貧血1例, 潰瘍性大腸炎2例, 急性呼吸循環不全1例, 脳外科手術後1例であった。1日平均ステロイド投与量はprednisoloneに換算して54.5mg, 平均投与期間は41.9ヵ月, 平均総投与量は10.9gであった。術後合併症は, 14例 (77.8%) にみられ, 創部感染, 縫合不全, MOF, DICなどであった。在院死亡を6例 (33.3%) に認めた。ステロイド投与患者では合併症を起こしやすいことから, 原疾患の活動性, ステロイド投与歴を十分把握した上で腹部救急疾患の治療を行うことが重要と思われた。