著者
曽余田 浩史
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

(1)学校づくり(学校経営)の営みをデザイン行為として捉えるための基礎作業として、デザイン学(方法論)を意識して組織デザインを論じるK.Visscherらの見解を手掛りに、古典的なデザインアプローチと開発的なデザインアプローチの原理や特徴を対比的に考察した。古典的なデザインアプローチは「合理的な問題解決」としてのデザイン観であり、近年の学校経営やスクールリーダー教育の理論と実践に色濃く反映されている。このデザイン観は、デザインする主体とデザインされる客体の分離を前提とし、人々の行動・取組み(組織行動)をコントロールするための「青写真」をつくることをデザイン行為と捉える。デザインの対象は、目に見えるフォーマル構造や計画(青写真)である。デザインのプロセスは、①問題の分析→②解決策のデザイン→③実行→④評価という段階モデルにもとづいており、①の段階において複雑性を排除する。開発的なデザインアプローチは、「状況との省察的な対話」としてのデザイン観である。デザインする主体とデザインされる客体の分離を否定し、両者をトランスアクション(相互形成)的な関係で捉える。デザインの対象は、人々が自分で自身の仕事をデザインしたり変えたりする動きの創造をねらった変化や動きである。デザインのプロセスは集合的な学習であり、状況との省察的な対話である。そして、組織づくりのプロセス全体をデザイン行為と捉える。(2)デザインの視点から斎藤喜博の「学校づくり」論を考察し、そのデザイン的な原理を試論的に考察した。相手が変革することによって自分が変革するというトランスアクション(相互形成)的な関係、「固定しない」という実践の在り方、「典型」創造などがデザイン行為としての学校づくりにおいて重要であることを言及した。