著者
曽根 理嗣 梅田 実
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

有人宇宙活動の長期化や拠点化が進む中では炭酸ガス有効利用は重要である。今日、炭酸ガス還元にはサバチエ反応が用いられる(CO2+4H2→CH4+2H2O)。この反応はメタンと水を生じる。水は活用されるがメタンは廃棄される為、閉鎖系物質収支はマイナスとなる。また当該反応は一般に350℃以上で平衡になる発熱反応であり、高温維持の為のエネルギー投入と熱処理に課題が多い。提案者らは炭酸ガスの酸化力と水素の還元力に着目し、両者の間で燃料電池を構築し、電力と炭酸ガス還元体の同時創出に世界で初めて成功した。当該反応は100℃以下で維持が可能であり、外部エネルギーの投入は不要であり、「発電」が可能である。本提案ではヒトの生活に有効な生成物の選択性と収率の向上を図るために反応機構を解明し、当該技術の実利用を可能にするための研究を進めている。触媒としてPt-Ruを使用し、反応メカニズム解明のための実験を展開した。反応生成物に電位依存性があるが、この電位に電極の接触抵抗が影響を及ぼすことが可能性としてあり得るため、接触抵抗が異なる複数の実験を実施した。ただし、結果としては特に影響を受けているような兆しはなく、従来の燃料電池セルの設計に、反応場に対して影響を与えるようなパラメータはないことが認識されつつある。また、特に当該反応場では、炭酸ガスと水素を反応させている。水素は炭酸ガス側に混入することは、物理的および化学的に可能であり、この混入した水素がカソード側で化学反応を起こしていることが可能性としてありうる。これは、当該反応が純粋に燃料電池反応として期待される生成物を作り出しているのか、生成物生成過程と反応場は別に存在するかを明確にするために重要な要素となる。当該実験には、カソード側に微量の混合ガスを使用して混合ガスごとの反応生成物への影響を見極める必要があり、現在も検討を進めているところである。