著者
古川 聡
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2020-04-01

月・火星への有人探査計画が進む中、宇宙極限環境での生体変化に関し、無重力、閉鎖環境、宇宙放射線・微生物環境リスクを重点的に取り上げて学際的チームで臨み、分子・細胞レベルからヒトの高次制御まで統合的理解を深め、これらリスクの複合的効果など未知の領域にも挑戦し、宇宙を切口にした新しい研究領域「宇宙に生きる」を創った。得られた知見は、地上の超高齢化・高ストレス社会を克服するための方策として応用できる。
著者
澤井 秀次郎 坂井 真一郎 坂東 信尚 丸 祐介 永田 晴紀 後藤 健 小林 弘明 吉光 徹雄
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-05-31

空気吸込式エンジンを用いるスペースプレーンの実現に向けて,飛行実証を通して基盤となる技術を獲得するために,気球による高高度からの落下と小型ロケットブースターによる加速を組み合わせた高速飛行実証システムの構築を目指した.飛行軌道検討を主としたシステム概念検討を行った.その結果を踏まえ,飛行実験機の試作研究を行った.試作研究を通して,システム統合および飛行制御系技術の実践研究を行った.さらに,スペースプレーンに必要な技術として,空力設計技術の研究を行った.実験オペレーションまで想定した実験計画を検討し,本システムのメリットに加え,課題も整理した.
著者
古川 聡 鈴木 豪 緒方 克彦 大島 博 村井 正 村上 敬司 鈴木 健之 阿部 高志 佐藤 勝
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

本研究では、同意を得た被験者(一度に8人)に2週間、JAXAの閉鎖環境適応訓練設備内に居住してもらい、閉鎖環境に加え密なスケジュールでの模擬科学実験などの負荷を宇宙飛行想定で加え、それらの前中後における唾液や血液サンプルの変化を調べ、閉鎖ストレスによるダメージを客観的に評価できる新規ストレスマーカーを探索した。閉鎖設備実験モデルに特徴的な血中遺伝子発現パターンの変化を明らかにし、また閉鎖滞在に伴うストレスを身体活動量低下とそれ以外の要因による影響に分けて評価することを可能にするストレスマーカー遺伝子候補を絞り込むことができた。
著者
山田 和彦 永田 靖典 高橋 裕介 莊司 泰弘 鈴木 宏二郎 今村 宰 秋田 大輔 石村 康生 中篠 恭一
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、超小型衛星に搭載可能な姿勢センサ群を開発し、ISSから放出される超小型衛星EGGを利用し、大気の影響を無視できない超低高度軌道での軽量膜面を有する宇宙機の挙動の実測を行った。超小型衛星EGGの運用において、希薄気体中における軽量な膜面に働く大気抵抗の影響により軌道が変更することを確認するなど、そのダイナミクスを理解するためや解析ツール開発の参照となる貴重な実測データを得ることができた。これらのデータは、運用終了時の衛星を非デブリ化する技術等、将来、超小型衛星にとって重要な技術開発のために役立つと期待される。
著者
柳沢 俊史 吉田 二美 伊藤 孝士 奥村 真一郎 小田 寛 池永 敏憲 吉川 真 樋口 有理可
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

これまでの近地球小天体の発見手法とは全く異なる新たな検出手法を開発し、実際に日本及び豪州でのサーベイ観測をとおして近地球小天体を9つ発見した。これにより小型の望遠鏡とFPGAを利用した高速解析による安価で効率的な近地球小天体の発見手法が確立され今後多くの近地球小天体、特にこれまでほとんど発見されてこなかった10m-数100m級の近地球小天体の発見に大きく貢献すると思われる。これにより太陽系進化に関するあらたな知見をもたらすことが期待されるとともに地球衝突天体の早期発見にも役立つはずである。
著者
荒井 康智 前田 辰郎
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、近年性能限界が明らかになってきたCPUのSiトランジスタより更に移動度が高い、CPU高速動作が可能なSiGeトランジスタに利用する高品質SiGe結晶育成方法を研究した。主な課題は、Si種子結晶からSiGeが育成する際に、SiとSiGe の熱膨張率差でSiGe結晶に発生するモザイク構造を抑制する事であった。研究の結果、熱膨張率差緩和を期待したSiGe結晶を種子結晶とする方法は、成長SiGe結晶に多結晶が多くみられ、高品質化が困難である可能性が高いことが判り、新しくダブルゾーンでの解決方法を模索する事とした。
著者
曽根 理嗣 梅田 実
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

有人宇宙活動の長期化や拠点化が進む中では炭酸ガス有効利用は重要である。今日、炭酸ガス還元にはサバチエ反応が用いられる(CO2+4H2→CH4+2H2O)。この反応はメタンと水を生じる。水は活用されるがメタンは廃棄される為、閉鎖系物質収支はマイナスとなる。また当該反応は一般に350℃以上で平衡になる発熱反応であり、高温維持の為のエネルギー投入と熱処理に課題が多い。提案者らは炭酸ガスの酸化力と水素の還元力に着目し、両者の間で燃料電池を構築し、電力と炭酸ガス還元体の同時創出に世界で初めて成功した。当該反応は100℃以下で維持が可能であり、外部エネルギーの投入は不要であり、「発電」が可能である。本提案ではヒトの生活に有効な生成物の選択性と収率の向上を図るために反応機構を解明し、当該技術の実利用を可能にするための研究を進めている。触媒としてPt-Ruを使用し、反応メカニズム解明のための実験を展開した。反応生成物に電位依存性があるが、この電位に電極の接触抵抗が影響を及ぼすことが可能性としてあり得るため、接触抵抗が異なる複数の実験を実施した。ただし、結果としては特に影響を受けているような兆しはなく、従来の燃料電池セルの設計に、反応場に対して影響を与えるようなパラメータはないことが認識されつつある。また、特に当該反応場では、炭酸ガスと水素を反応させている。水素は炭酸ガス側に混入することは、物理的および化学的に可能であり、この混入した水素がカソード側で化学反応を起こしていることが可能性としてありうる。これは、当該反応が純粋に燃料電池反応として期待される生成物を作り出しているのか、生成物生成過程と反応場は別に存在するかを明確にするために重要な要素となる。当該実験には、カソード側に微量の混合ガスを使用して混合ガスごとの反応生成物への影響を見極める必要があり、現在も検討を進めているところである。
著者
安部 正真 矢田 達
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

新規に整備を行ったイオン照射装置を用いて、小惑星模擬表層物質としての含水ケイ酸塩鉱物と無水ケイ酸塩鉱物に対して、太陽風を模擬した水素イオンの照射実験を行った。照射前後の反射スペクトル測定を行ったところ、水素イオンの照射によって、H2OおよびOHに関連する吸収バンドに強度変化が見られた。このことから、水素イオンがケイ酸塩鉱物と反応して水を生成することを示唆する知見が得られた。大気のない小惑星や月表層のケイ酸塩鉱物に水素イオンが貫入し、結晶構造を壊し、活性化した酸素に水素イオンが結合することにより、SiOHやH2Oが形成していると考えられる。今年度は照射する試料を変えて、イオン照射量とスペクトル変化の関係に関する知見を獲得した。微隕石衝突を模擬した宇宙風化実験の結果とも整合する結果が得られている。また、ケイ酸塩鉱物への水素イオンの貫入で形成されるOHやH2Oの温度安定性についての知見を得るために、照射装置のサンプルホルダーに加熱機構を付加する改修を行った。この結果は実際に月表面で観察された水に関する吸収バンドの生成メカニズムを考察するのに役立つと考えられる。また、微隕石衝突を模擬した実験による反射スペクトル変化の測定は主に、可視波長域で行われているため、その結果と比較できるように、本研究で用いているFTIRの観測波長域を可視域まで拡張した。可視域には0.7ミクロンの水質変成に関係する吸収バンドがあり、宇宙風化がこの吸収バンドにどのような変化を及ぼすかについての考察にも役立つと考えられる。これらの改修後の照射・加熱実験および反射スペクトル測定の実施と結果の考察については、来年度も引き続き行う予定である。
著者
橋本 樹明 大槻 真嗣 前田 孝雄 眞下 泰輝 前田 孝雄 大谷 智宏 佐野 俊太
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

探査機が月や火星などの天体に着陸する際に、残留水平速度がある場合や斜面・岩などの存在する不整地へ着陸する場合においても転倒しない着陸システムについて研究を行った。探査機の着陸脚と天体表面の動的モデルを構築し、数値シミュレーションにより探査機の動的挙動を解析した。その結果から、着陸脚をセミアクティブに制御する方法を提案した。すなわち、伸縮式着陸脚の減衰係数を可変にすることができるデバイスを追加し、探査機の角速度と着陸脚の伸縮方向の符号の積に応じて当該脚の減衰係数を増減させるという方式である。本方式により耐転倒防止能力が大幅に上がることを数値シミュレーションおよび着地実験により検証した。